「WWDJAPAN」ポッドキャストシリーズの連載「考えたい言葉」は、2週間に1回、同期の若手2人がファッション&ビューティ業界で当たり前に使われている言葉について対話します。担当する2人は普段から“当たり前”について疑問を持ち、深く考え、先輩たちからはきっと「めんどうくさい」と思われているだろうな……とビビりつつも、それでも「メディアでは、より良い社会のための言葉を使っていきたい」と思考を続けます。第24弾は、【推し活】をテーマに語り合いました。「WWDJAPAN.com」では、2人が対話して見出した言葉の意味を、あくまで1つの考えとして紹介します。
若手2人が考える【推し活】
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「推し活」とは、応援している芸能人やアイドル、キャラクターなどをグッズやイベント参加などを通して支援する活動。これまでもファンという形で熱心に応援する文化はあり、推す対象と仲良くなりたい、近づきたいといった感情を原動力に支援してきた。一方2022年現在広まっている「推し活」の概念は、プロとして活動する推しを見守る形で、推し活を通して“オタク”同士で情報や気持ちを共有したりして、コミュニティー意識やアイデンティティーを形成しているのが特徴だ。それゆえ、推しへの愛に対して見返りを求める応援は少なく、「推しが尊い」「推ししか勝たん」といった“存在しているだけでありがたい”という感情を糧にする人が増加している。
「推し活」はグッズ製作会社やレコード会社のみならず、ライブやイベントに行く地域などの宿泊や交通、飲食といった幅広い業界に経済的に貢献をしている。矢野経済研究所が2020年12月に発表した調査によると、その経済効果は6000億円以上だという。購買活動といった直接的な活動に加えて、今はメイクやコーディネートに推しの要素を取り入れたり、推しと同じものを身につけたり、グッズや書籍を創作したりするようにもなった。
この“推し活需要”に着目し、ライブ用のうちわが入るバッグやペンライトなどが収納できるポーチを開発するブランド、さらに推し活用のレンタル服サービスも出てくるようになった。これらは推しのメンバーカラー(グループに所属している場合、多くのアイドルは自分を象徴するカラーがある)のものを持てるようにカラーバリエーションが豊富なのと、“オタバレ(オタクだと周囲に知られること)”しない日常使いもできるもので人気。これまで特にジャニーズ系のファンがライブに“参戦”するときは、カラーがはっきりとしたオーバーオールやチュチュを着たりして、どれだけ全身で派手にコーディネートできるかを楽しんでいる印象だったが、近年の推し活では、日常使いできるファッションやメイクに推しのエッセンスを盛り込んで楽しむ文化が普及している。
【ポッドキャスト】
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ポッドキャスト配信者
ソーンマヤ:She/Her。翻訳担当。日本の高校を卒業後、オランダのライデン大学に進学して考古学を主専攻に、アムステルダム大学でジェンダー学を副専攻する。今ある社会のあり方を探求すべく勉強を開始したものの、「そもそもこれまで習ってきた歴史観は、どの視点から語られているものなのだろう?」と疑問を持ち、ジェンダー考古学をテーマに研究を進めた。「WWDJAPAN」では翻訳をメインに、メディアの力を通して物事を見る視点を増やせるような記事づくりに励む
佐立武士(さだち・たけし):He/Him。ソーシャルエディター。幼少期をアメリカ・コネチカット州で過ごし、その後は日本とアメリカの高校に通う。早稲田大学国際教養学部を卒業し、新卒でINFASパブリケーションズに入社。在学中はジェンダーとポストコロニアリズムに焦点を置き、ロンドン大学・東洋アフリカ研究学院に留学。学業の傍ら、当事者としてLGBTQ+ウエブメディアでライターをしていた。現在は「WWDJAPAN」のソーシャルメディアとユース向けのコンテンツに注力する。ニックネームはディラン