毎年6月の「プライド月間(Pride Month)」は、LGBTQ+コミュニティーや性の多様性を祝う月として、世界各国でイベントやオンライン上での情報発信が活発に行われる。ファッション&ビューティ業界でも、LGBTQ+コミュニティーへのサポートを表明するキャンペーンや、社内外で多様性と包括性を改善するための取り組みを見直すなどの動きが多くみられる。また、LGBTQ+コミュニティーを象徴するレインボーモチーフのアイテムを発売し、その利益をコミュニティーの支援に充てるなども定番となっている。この記事では、取り組みやキャンペーン、アイテムを2022年に発表した15ブランドを紹介する。
「プライド」「プライド月間」とは?
「プライド」は、英語で"誇り"や"自尊心"を意味するが、英語圏では近年、「プライド」はLGBTQ+コミュニティーの"誇り"や"自尊心"を指すことが多い。西洋では特にキリスト教の影響で、同性愛が"罪"であり、"恥(シェイム、shame)"であるとされてきたことから、その反対である「プライド」という言葉を使って社会運動を始めたとされる。
1年を通しLGBTQ+の社会的活動は行われているが、1969年6月28日にニューヨークのLGBTQ+のコミュニティーが集まるバー、ストーンウオール・イン(STONEWALL INN)の客が度重なる警察の踏み込み捜査と暴力に立ち向かい、デモを起こしたことから、6月に特に活発にマーチやパレードなどを行うようになった。近年では”映える”レインボーのグッズにばかり注目が集まりビジネスチャンスとしか見ない“レインボー資本主義”を危惧する声もあがっている。その売り上げが支援に使われているかどうか、企業がどのような取り組みを行なっているのか、判断することが求められていると言える。
LGBTQ+「プライド月間」を祝うブランド15選
「アミ パリス」がトーマス・デーリー選手とのコラボニットをオークションで発表
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「アミ パリス(AMI PARIS)」が男子高飛び込みのトーマス・デーリー(Thomas Daley)選手とコラボした2種類のニットを発表。デーリー選手は編み物好きで知られ、1種類は本人が手編みしたロゴが施されている。アイテムはオンラインオークションで落札され、売り上げは慈善団体カレイドスコープ・トラスト(KALEIDOSCOPE TRUST)に100%寄付される。同団体はイギリスを拠点に2011年に設立され、LGBTQ+コミュニティーの人権のために活動している。デーリー選手はゲイであることをオープンに活動している。
サンダルやバッグ、アパレルのプライドコレクションを発売した「アグ」
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「アグ(UGG)」は、 “オールジェンダープライドコレクション“を発表。サンダルをはじめ、アパレルとバッグも用意。米国ではトレバー・プロジェクト(THE TREVOR PROJECT)を、日本では東京レインボープライド(TOKYO RAINBOW PRIDE)を支援している。今年度は、トレバー・プロジェクトに12万5000ドル(約1687万5000円)を寄付したほか、2020年から継続支援している東京レインボープライドには同コレクションの一部売上金を寄付する。
「ヴェルサーチェ」からLGBTQ+コミュニティーサポートするヴェルサーチェ財団が誕生
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「ヴェルサーチェ(VERSACE)」の親会社カプリ・ホールディングス(CAPRI HOLDINGS)は、6月のプライド月間に合わせてLGBTQ+コミュニティーの認知度向上と支援を目的としたヴェルサーチェ財団を創設し、財団の活動費用として1000万ドル(約13億5000万円)の寄付を約束。財団の具体的な活動内容は随時発表される予定だ。
「H&M」が“家族”をテーマにしたキャンペーンを公開
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「H&M」は、“My Chosen Family(私が選んだ家族)”をテーマにしたキャンペーンページを公開。血縁や生物学的な結びつきにとらわれない、愛することを自ら選んだ人たちで構成される家族という概念に焦点を当てている。特に3つの家族に焦点を当て、彼らのストーリーを写真、動画やインタビューで紹介した。LGBTQ+コミュニティーの平等な権利と公正な扱いを支持する国連の“フリー・アンド・イコール・キャンペーン(FREE & EQUAL CAMPAIGN)”に10万ドル(約1350万円)の寄付を行う。
「ラッシュ」が同性婚法制化の“サイレントデモ”とキャンペーンを開催
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「ラッシュ(LUSH)」は6月28日、東京と大阪で同性婚の法制化に向けた街宣活動を開催した。「ラッシュ」のスタッフのほか、公益社団法人マリッジ・フォー・オール・ジャパン(Marriage For All Japan、結婚の自由をすべての人に)、LGBT支援団体、同性婚訴訟の一部原告らが参加し、婚姻の平等を訴えた。12人のクリエイターが婚姻の平等をテーマに制作したアートをポストカードやデータとして配布し、カジュアルに賛同の輪を広げていくという企画も行っている。
「バートン」とコラボしてプライドコレクションを発表できるチャンス
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スノーボードブランド「バートン(BURTON)」は、プライドコレクションでコラボするアーティストを7月1日まで募集している。ポートフォリオやデザイン、Tシャツの絵型などで応募、当選した人は同ブランドのプロダクトチームと協業し、プライドコレクションをローンチできる。また、プライドを記念し、アウトドアを通じてLGBTQ+をサポートする団体ザ・ヴェンチャー・アウト・プロジェクト(THE VENTURE OUT PROJECT)に2万ドル(約270万円)を寄付する。
LGBTQ+の声を発信するプラットフォームを公開した「ドクターマーチン」
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「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」は、動画を通じてLGBTQ+コミュニティーの声を発信するプラットフォーム“プライド ジェネレーションズ(PRIDE GENERATIONS)”を公開。最初の動画となるエピソード1では、有色人種のLGBTQ+コミュニティーのためのUK・ブラック・プライド(UK BLACK PRIDE)とトランジェンダーコミュニティーのためのロンドン・トランス・プライド(LONDON TRANS PRIDE)の創設者に焦点を置いた。これからもアーティストやクリエーターとのコラボも行い継続的に活動していく。また、同ブランドは認定特定非営利活動法人リビット(REBIT)を含む世界中のLGBTQ+団体に毎年20万ポンド(約3300万円)以上を寄付している。
プライドコレクションを発表した「バレンシアガ」
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「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は、アパレルやジュエリーのシリーズ“バレンシアガ プライド 22(BALENCIAGA PRIDE 22)”を発表。売上の15%は、LGBTIQ+の⼈権擁護および推進を行うNPO団体アウトライト アクション インターナショナル(OUTRIGHT ACTION INTERNATIONAL)に寄付する。写真を中心としたキャンペーン“エニバディ イズ クィア(ANYBODY IS QUEER)”も公開した。
インタビューコンテンツでプライド月間を盛り上げる「ラルフ ローレン」
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30年以上にわたってLGBTQ+コミュニティーの継続的支援を行う「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」は、インタビューで構成した動画を公開。LGBTQ+ニュースやファッション、エンタメ、ライフスタイルなどを扱う「アウト(OUT)」マガジンの元編集長、フィリップ・ピカルディ(Phillip Picardi)らがプライドの歴史、“アメリカンドリーム”の考察、コミュニティーについてなどを語っている。合わせて、レインボーモチーフを取り入れたカシミアセーターやポロシャツ、スニーカーなどを発売。ストーンウォールコミュニティー財団(STONEWALL COMMUNITY FOUNDATION)と提携して寄付を行うほか、寄付活動を購入者に呼びかける。
米時計大手の「フォッシル」、レインボーとトランスジェンダーフラッグカラーのコレクションを発表
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米時計大手の「フォッシル(FOSSIL)」は、限定カプセルコレクションを発売。コレクションの売り上げ全額、最低でも10万ドル(約1350万円)をLGBTQ+コミュニティーの若い年代の自殺防止に働きかけるNPO団体、トレバー・プロジェクトに寄付する。
カーラ・デルヴィーニュらがデザインに関わったコレクションを発売した「プーマ」
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ブランドのアンバサダーを務めるカーラ・デルヴィーニュ(Cara Delevingne)とカラ・サイクス(Carra Sykes)がデザインに携わった“トゥギャザー フォーエバー(TOGETHER FOREVER)”コレクションを発売した「プーマ(PUMA)」。鮮やかなカラーやロゴを使ったTシャツやフーディー、ショートパンツ、ブラレット、レギンスなどをそろえた。コレクションの収益の20%、最低でも25万ドル(約3375万円)を中傷と闘うゲイ&レズビアン同盟(GAY & LESBIAN ALLIANCE AGAINST DEFAMATION以下、GLAAD)に寄付する。
リアーナによる「サヴェージ x フェンティ」、第2弾となるプライドコレクションを発売
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リアーナ(Rihanna)によるランジェリーブランド「サヴェージ x フェンティ(SAVAGE X FENTY)」は、第2弾となるプライドコレクションを発売した。レースやラメ、メッシュ素材などを使ったカラフルな4シリーズを展開。ランジェリーに加えて、アパレルやガーターベルト、ストッキングなどのアクセサリーもそろえる。売り上げはGLAADに寄付するほか、2012年にリアーナが立ち上げた非営利団体のクラーラ・ライオネル・ファンデーション(CLARA LIONEL FOUNDATION)と協力して、黒人のトランスジェンダーを支援するフォー・ザ・ガールズ(FOR THE GWORLS)にも寄付する。
ビデオコンテンツと限定コレクションでLGBTQ+コミュニティーを支援する「ケイト・スペード ニューヨーク」
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“セレブレート ウィズ プライド(Celebrate with Pride)”キャンペーンを展開する「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」は、今年もトレバー・プロジェクトと提携。3年目となる今回は、パートナーシップの一環として同団体に15万ドル(約2025万円)を寄付する。プライドコレクションの売り上げの10%も同様に寄付する。ほかにも、プライド月間に関連したビデオコンテンツを作成し、ウェブサイトやSNSで公開した。
「キャロリーナ ヘレラ」はジュエリーの限定カプセルコレクションを発表
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「キャロリーナ ヘレラ(CAROLINA HERRERA)」は、クリスタルを使用したレインボーカラーのネックレスやイヤリングの限定カプセルコレクションを発売。売り上げの全額を、ニューヨークのLGBTQコミュニティーにヘルスケアなどを提供するヘルスセンター、キャレン・ロード(CALLEN-LORDE)に寄付する。
「クレージュ」、ザ・ウェブスターとコラボしてアーカイブアイテムをレインボーに再解釈
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マイアミ発ラグジュアリーセレクトショップ「ザ・ウェブスター(THE WEBSTER)」と「クレージュ(COURREGES)」は、プライド月間を祝うカプセルコレクションを発売。「クレージュ」のアーカイブと、アーカイブアイテムを再解釈した“リエディション コレクション(Reedition Collection)”のアイテムを、公式プライドフラッグに使用されるそれぞれのカラーを使ってアレンジ。ユニセックスのTシャツなどを展開した。収益の全額を、クィア文化のクリエイティビティーやコミュニティーの権利向上を推進するソーシャルプラットフォーム、ノードラマ(NO DRAMA)に寄付する。