スイス発ラグジュアリースキンケアブランド「ラ・プレリー(LA PRAIRIE)」が百貨店の富裕層向け外商ビジネスで売り上げを伸ばし好調だ。4月には国内初の旗艦店「ラ・プレリー サロン」をギンザ シックス(GINZA SIX)にオープンし、発信を強めている。1月に就任したヨアン・フィケ(Johann Fiquet)=ラ・プレリージャパン社長に今後の成長戦略について聞いた。
WWD:20年以上化粧品業界に携わる中で、「ラ・プレリー」の独自性はどこにあるか?
ヨアン・フィケ=ラ・プレリージャパン社長(以下、フィケ):完璧なものを追求する、執着心とも言えるこだわりが非常に強いブランドで、感銘を受けた。それが製品やサービス、コミュニケーションを通して最終的にお客さまのエクスペリエンスにつながっている。その価値を最大化させるのが私の使命だと考えている。
WWD:国内初となる旗艦店の狙いは?
フィケ:世界観や製品などブランドが持つ最高のものを見せるショーケースとしての場を日本市場で作ることが最大の狙いだ。日本市場は非常に特異な性質を持っている。と言うのも私は欧州やアジアの市場を長く経験してきたが、日本人は化粧品に対するこだわりが強く、ラグジュアリーなものへの購買意欲も高い。「ラ・プレリー」はそうした高い要求に応えられる自負があり、まだ成功の余地があると確信している。ブランドとしては、日本市場に旗艦店がないことを注視していた。
WWD:2月には44年ぶりにブランドロゴを刷新、それに続くNFTアートの発表など新しい動きが活発だ。
フィケ:新しいロゴは創業時のロゴをベースに、今までのヘルベチカ書体をミックスしている。ブランドコンセプトの一つとして「時の流れに揺るがない美しさの追求」があるが、創業時から続く精神性やヘリテージを引き継ぎつつ、新しい世界へ一歩進もうというものだ。ラグジュアリースキンケアブランドといえば「ラ・プレリー」と言われるよう、価値や存在感を示していきたい。
WWD:ブランドを成長させるにあたり課題は?
フィケ:素晴らしいブランドであることは前提としてあるが、まだまだニッチで認知度の低さが一番の課題だ。これまでは外商ビジネスを含め百貨店が主たる販路でeコマースに手を延ばしていなかった。そのことが今後大きくのしかかってくるだろう。オンライン上のコミュニケーションを改善する必要がある。「ラ・プレリー」だけでなく、ラグジュアリーブランドといわれるところは業界を問わずeコマースに対してちゅうちょがあった。リアル店舗の補足的な立ち位置としてオンラインを捉える傾向があったと言える。すでに時代が変わり、今最も注力すべき領域である。
WWD:具体的にデジタル施策はどのようなものが考えられるか?
フィケ:単純に現状はデジタルソサイエティー、デジタルワールドでの「ラ・プレリー」の情報量の少なさを改善したい。ブランドバリューに対して存在感が低いと認識している。ソーシャルメディアやウェブメディアをもっと活用し、ユーチューバーやインフルエンサーとの取り組みも考えている。
WWD:新たな成長戦略で、ターゲットは変わるか?
フィケ:現在の顧客層は50代がボリュームを占めている。これらの既存のお客さまを大事にしつつ、ターゲットを広げていく。35歳〜40代が今後の大きなポテンシャルにつながると考えている。中国市場では既に、顧客の平均年齢が35歳になっている。日本でもそうしたシフトが可能だろう。
WWD:足元の商況はどうか。
フィケ:今年に入り2桁成長と非常に順調に進んでおり、年内にコロナ以前、2019年の水準まで回復するとみている。遅くとも年明けには可能ではないか。コロナ下、販売員を増やしたり、LINE公式アカウントを立ち上げデジタルコミュニケーションを積極的に行ったりして、既存の顧客に地道にアプローチしたことが今実を結んでいる。ただし、着任してまだ間もないので、これらは始まりにすぎないことを強調したい。