2023年春夏ミラノ・メンズ・ファッション・ウイークが6月17日から21日まで、イタリア・ミラノで開催された。全体のトレンド傾向として、テーラードスタイルで再び着飾って出かける喜びを謳歌するムードや、柔らかい素材を使った自由の表現、リラックススタイルとしてのデニムの復活などが見られた。明るい色使いやバミューダショーツが多く、夏に向けた爽やかなトレンドも台頭している。ここでは、バイヤーたちが感じた23年春夏ミラノメンズのポイントを、それぞれの心に残ったコレクションとともに紹介する。
サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)
レジナルド・クリスチャン(Reginald Christian)/メンズ・ファッション・マーケット・マネジャー
よかったブランド:「プラダ(PRADA)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ゼニア(ZEGNA)」「フェンディ(FENDI)」
「プラダ」を共同で手掛けるミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)は、タイムレスなスタイルの重要性を表現したコレクションを披露した。スーツはパリッと決まっていて、オーバーコートは赤いチェックなどでプレイフルにデザインされていて、新鮮さと定番デザインのバランスが完璧だった。ストライプのニットウエアやデニムのシャツとショートパンツをそろえ、春夏にぴったりのワードローブを展開していた。
ミラノメンズへのカムバックを果たした「ヴェルサーチェ」は、デザイナーのドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)がメンズウエアに一層思いを込めて手掛けていくことへの決意が感じられるコレクションだった。パワフルで、自己表現を存分に後押しするアイテムが特徴的だった。
「ゼニア」はファッションとサステナビリティが両立した美しさを発揮し、その旅路に身をささげたコレクションだった。メンズウエアの伝統的なシルエットを継承しながら、幾何学模様を取り入れた「フェンディ」は、実用性の高いものがそろっていた。
総評としては、今シーズンはポスト・コロナの進化版。再び外に出られる喜びや、ファッションの楽しさを表現しながら、パンデミック中に定着した着心地のよさも両立させていた。今コレクションは、カリスマ性とカジュアルなエレガンス、モダンなテーラリング、サステナビリティを強く意識したコレクションの集まりだった。全体的に、喜びや気楽さ、身軽な雰囲気が見られた。メンズファッションの復活を象徴し、新時代に向かう歴史のターニングポイントとなったファッション・ウイークだろう。
セルフリッジ(SELFRIDGES)
ボス・ミール(Bosse Myhr)/メンズウエア&ウィメンズウエアディレクター
よかったブランド:「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」「プラダ」「ゼニア」
「ジェイ ダブリュー アンダーソン」がミラノメンズに参加したのは、間違いなく今シーズンのハイライト。抽象的なルックの数々を披露していたのが印象的だった。「プラダ」のショー展開はいつも安定して素晴らしいものがある。舞台となった“紙製の家”は美しく壮大なインパクトを残した。「ゼニア」は自社工場の屋上からショーを届け、夕日をバックにランウエイを闊歩するモデルたちの演出が際立っていた。エレガントで美しいコレクションに、スニーカーを合わせたスタイルが光った。
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