毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2022年7月11日号からの抜粋です)
大塚:「ヨウジヤマモト プールオム(YOHJI YAMAMOTO POUR HOMME)」のショーは盛り上がっていましたね。パリコレの公式スケジュールに「デジタル」とあって、なぜだろうと思っていたら、ランウエイにタレントが続々と現れて。これがやりたかったんだなと思いました。
美濃島:「ヨウジ」は、昨シーズンも同じパターンでしたが、タレントもあくまでモデルとして登場し、服がしっかりと印象に残る良いショーでした。でも、メディアでの露出は、僕らも含めてどうしても「この人が出ました」という切り口が多かった。ブランドを知るタッチポイントとしてはいいとは思うのですが、やはり服を見てほしいですよね。
大塚:分かります。だから美濃島さんのリポートの記事タイトルにはタレントの名前がなくて、あくまで服を伝えようとするものでしたよね。
美濃島:そうなんです。タレントの名前を入れた方が間違いなくいい数値が出ますが、やはり服を伝えたい。メディアとして葛藤を感じるところです。パリの「セリーヌ オム(CELINE HOMME)」もすごかったですよね。
大塚:BLACKPINKのLISAとBTSのV、俳優のパク・ボゴムが来ていて、すごい人だかりで圧倒されました。でも、僕も美濃島さんと同じことを感じました。SNSの拡散によってブランドを知らない人にもアプローチできるけど、果たしてそれが売り上げにまでつながっているのか。会場を囲んでいたのは若い女性ばかりでしたし、こんな風にセレブリティーばかりが注目されることについて、もともとのブランドの顧客はどう感じるのかが気になりました。
美濃島:エディ・スリマン(Hedi Slimane)は“今”の若者のカルチャーをコレクションに反映してきたので、その部分ではアリなのでしょうけれど、ゲストにばかり注目が集まるのは本意ではないでしょうね。
大塚:「セリーヌ」はロゴTとかもあるから憧れて買う人もいるかもしれないけれどね。
美濃島:でも、「ヨウジ」のショーは青山店の地下で行われていて、VIP顧客も呼ばれていました。あのショーを間近で見られた顧客は、相当満足したのではないでしょうか。その意味では、バズだけではなく、ブランド価値につながるショーだったと思います。