中国の最高裁判所である最高人民法院はこのほど、2000年に中国で無関係の第三者によって登録された「マノロ ブラニク(MANOLO BLAHNIK)」の文字列を含む商標を無効とする決定を下した。
中国人実業家のファン・ユージョウ(Fang Yuzhou)が1999年に履物の区分で“Manolo & Blahnik”という商標を登録出願し、2000年1月に登録が認められた。ロンドンを拠点とするシューズブランド「マノロ ブラニク」は、登録が認められた3か月後に中国商標局に異議申し立てを行ったが、翌年却下されている。
「マノロ ブラニク」は、1998年に放映された「セックス・アンド・ザ・シティ(SEX AND THE CITY)」によって国際的にも知名度を高めたにもかかわらず、当時、中国商標局はブランド側が提出した証拠は不十分であり、ファン・ユージョウが申請した“Manolo & Blahnik”の商標登録が認められた2000年に以前に「マノロ ブラニク」は中国本土での販売やビジネスの実績がなかったと判断している。「マノロ ブラニク」はその後も長年にわたり、中国のあらゆる政府機関に不服申し立てを行ったが、それらはいずれも却下されている。
他方、風向きが変わったのは2017年のことだ。この年、中国国家知識産権局は自国を知財大国へ作り変える方針を掲げ、19年11月には中国商標法の改正が行われ、中国の裁判所では商標権侵害について厳しく判断する傾向が強まった。
中国ではいわゆる“先願主義”を採用しており、無関係の第三者によって商標を出願・登録されるケースが多発しており、こうして登録された商標を“冒認商標”と呼ぶ。また、正当な権利を有している企業やブランドが、冒認商標を取得した無関係の第三者から、法外なライセンス料や買い取り料を請求されるケースや、冒認商標を使用して中国で類似のビジネスを立ち上げられてしまうケースも確認されている。こうしたことから、ファッション業界では、「ニューバランス(NEW BALANCE)」「ヴェトモン(VETEMENTS)」「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「アクリス(AKRIS)」「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」「ダンヒル(DUNHILL)」「ディースクエアード(DSQUARED2)」など多くのブランドが中国において商標登録できていない。