オートクチュールをルーツに持つフランスのラグジュアリーメゾン「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は現在、ストリートカルチャーやゲーム、NFTを含む最新のデジタルにも強いブランドとして独特のポジションを築いている。同ブランドが対象とするのは、クリエイションも顧客もいわば360°の全方位。デムナ(Demna)=アーティスティック・ディレクターと共に「バレンシアガ」の新章を開く、セドリック・シャルビ(Cédric Charbit)=バレンシアガ社長兼最高経営責任者(CEO)にその戦略を聞いた。(編集統括サステナビリティディレクター 向千鶴)
WWDJAPAN(以下、WWD):この時代に、なぜオートクチュールを復活させたのか?
セドリック・シャルビ=バレンシアガ社長兼最高経営責任者(以下、シャルビ):「バレンシアガ」の旅は105年前に、クチュールメゾンとして始まった。創業者のクリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)は“クチュリエの中のクチュリエ”と呼ばれ、私たちが今知るオートクチュールをある意味“発明”し、ファッションの歴史に大きな影響を与えた人。その伝統とポジションが今も「バレンシアガ」というブランドを特別なものとしている。デムナと初めて会ったとき、「この人ならこの遺産、創造と革新、そして時代を超越したものを未来に伝えることができる」と直感した。だからデムナが私のところに来て、「もう一度クチュールを探求したい」と言ったとき、それは私にとって夢のような出来事だった。この極めて重要な支柱をメゾンに戻すことができてうれしい。私たちは今、モダンラグジュアリーを再定義し、ブランドの未来のための土台を築いているところだ。
WWD:クチュールのショーの規模は他と比べてもかなり小さく、エクスクルーシブだが、親密さにこだわる理由は?
シャルビ:会場は、もともとクリストバル・バレンシアガのクチュールサロンだった場所。当時はクリストバル本人が顧客やプレスにクチュールコレクションを披露していた。歴史的かつ、エモーショナルなアドレスだから、親密さを保ちつつ、クチュールらしいプレゼンテーションにしたかった。ショーのチケットは3000のリクエストがあったが、招待できたのは150人。同時に、デジタル上のインパクトは1週間で53億インプレッションを獲得した。現代は親密な関係を築きながら、広い範囲にリーチすることができる興味深い時代なのだ。「バレンシアガ」のラグジュアリーの定義は、包括的で同時に非常にエクスクルーシブであること。これこそ、デムナが進めるクチュールの現代化だ。
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