グローブライドが手掛けるフィッシングブランドの「ダイワ(DAIWA)」は、漁網アップサイクルプロジェクト「ビーアースフレンドリー(Be Earth-Friendly)」を通じて、海洋環境の改善に取り組んでいる。2023年春夏「楽天ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」期間中には、プロジェクト第2弾として産学連携のファッションコンペを開催した。漁網をフックに漁業関係者・アパレル産業・顧客、それぞれの環境課題と向き合う“完全循環型のアップサイクル”とは。釣り場のクリーンナップ事業からマテリアルリサイクルへと広がる「ダイワ」のサステナビリティを紹介する。
漁網のアップサイクルで解決すること
元々「ビーアースフレンドリー」は、09年にスタートした「ダイワ」の環境保全プロジェクトだ。釣り場のクリーンナップ活動「シンク クリーン(Think Clean)」を前身とし、希望者には環境配慮型のゴミ袋も無償で提供してきた。
当初から「海洋環境の悪化」を大きな課題と捉えて、子どもたちを対象にした自社フィッシングクラブ「ダイワヤングフィッシングクラブ(D.Y.F.C)」のワークショップなどを開催。繊維の抜け落ちを抑えた“レスマイクロプラスチック フリース”などの環境対応商品の開発や、アパレルのリサイクル回収なども積極的に行ってきた。
サステナビリティのさらなる強化を目的にスタートした、漁網アップサイクルプロジェクトでは、再生素材メーカーのリファインバースの協力で、漁網をマテリアルリサイクルした生地を開発。ストーリー性やデザイン性といった高付加価値のあるアパレルへと循環させる。廃棄される漁網は、塩や砂などの付着で解体や分別が難しく、現状は埋め立て処分が主流だ。日本の海洋を漂う漁網は、海外から流れ着くものもあり、それらが環境汚染にもつながっている。
同プロジェクトでは、リファインバースのリソースと独自テクノロジーで、北海道・厚岸町で廃棄漁網の回収・分別を行い、愛知・一宮市でペレット化。そこにバージンナイロンなどを混ぜて紡績したアップサイクル生地から、アパレル製品を作り出す。さらに再生されたウエアは、使用後回収して再び製品化することが可能だ。「漁網を回収した地域まで分かる」というトレーサビリティーが明確な“完全循環型のアップサイクル”は、消費者にもそのイメージが伝わりやすく、共感しやすい。さらに規模が大きくなれば、二酸化炭素の多量排出や⽯油由来原料の枯渇など、さまざまな環境負荷にアプローチできる。
「ダイワ」は今後24-25年秋冬シーズンにかけて、生分解性素材や無水染色生地の採用などを予定している。“Feel the earth”をコーポレートスローガンに、事業フィールドである「海を守る」サステナビリティを加速させる。
Project 1
海から漁師に“還る”アパレル
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表参道ヒルズで今年3月に開催されたプロジェクト第1弾では、北海道の廃棄漁網を漁業関係者が着るアパレルへとアップサイクルした。会場では、「ダイワ」が製作したレインジャケットやパンツ、サロペットのほか、ドレスやセットアップなども展示。漁網がリサイクルされる工程や、実物のペレットや糸なども展示し、漁網が形を変えて漁師の元へと“還る”循環のストーリーを紹介した。
Project 2
若い世代に提供する
“サステナブル×ファッション"の場
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プロジェクト第2弾では、文化学園と東京藝術大学との産学連携でファッションコンペを9月1日に渋谷ヒカリエで開催。東京藝術大学の学生が、廃棄漁網を再利用し会場の装飾を手掛けた。「海の世界から生まれ変わるアップサイクル」をテーマにしたコンペでは、文化学園の学生が全24体のファッションアイテムを製作。廃棄漁網のリサイクル素材を60%以上使用することを条件に、カジュアルからフォーマルまで多彩なルックがそろった。
イベント開催に込めた思い
審査員は、サステナブルなコンセプトやデザイン性、完成度などの観点から上位5作品を選定。最優秀賞には、文化服装学院アパレル技術科の髙田綾さんによるウエディングドレス「アライメント(aligment)連携」が輝いた。「アップサイクル素材でウエディングドレスが作られるくらいサステナビリティが世界に浸透することを願った」という作品は、大胆なプリーツが特徴だ。審査員を務めた佐々木勉「ディーベック(D-VEC)」クリエイティブディレクターは、「アップサイクルをクチュールの域にまで高めた完成度の高い作品」と評価した。髙田さんの作品は商品化され、表参道ヒルズの「ディーベック」旗艦店で販売予定。5点の入賞作品は11月上旬まで「ダイワ」アパレルショールームで展示中だ。
小林謙一グローブライド執行役員フィッシング営業本部アパレルマーケティング部長は、「第1回のイベントでは、若い方からサステナビリティへの貢献の仕方が分からないという声を聞いた。昨今は、環境汚染の深刻な問題も起きている。これら二つの課題解決にもなる“思いを持った”取り組みを学生たちと行いたいと思った」と開催の意図を語った。
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