米ブランドマネジメント会社オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)は8月16日、英国のライフスタイルブランド「テッドベーカー(TED BAKER)」をおよそ2億1100万ポンド(約339億円)で買収した。
「テッドベーカー」は、1988年にレイ・ケルヴィン(Ray Kelvin)元最高経営責任者(CEO)が英国グラスゴーで創業。シャツ専門店としてスタートし、トータルウエア、バッグ、シューズ、寝具、アクセサリー、雑貨などを手掛けるグローバルなライフスタイルブランドとして成長した。現時点では世界で約370店を展開している。日本には2012年に進出し、東京・表参道に1号店をオープン。その後、16年に移転オープンした表参道の旗艦店は21年に閉店しており、現在は複数の百貨店に出店している。
順調に事業を拡大していた「テッドベーカー」だが、19年にケルヴィン元CEOが不正行為や従業員への不適切な身体的接触の疑いで辞任。コロナ禍の影響もあって経営や財務上の問題を抱えることとなり、22年4月ごろから身売りを検討していた。その際、ABGのほか、同じく米ブランドマネジメント会社のブルースター・アライアンス(BLUESTAR ALLIANCE)と米投資会社シカモア・パートナーズ(SYCAMORE PARTNERS)が有力な買い手候補として挙げられていた。
今回、ABGはテッドベーカーの発行済み株式を全て取得する。当初、テッドベーカーは1株当たり160ペンス(約257円)での売却を提示していたが、同110ペンス(約177円)での取り引きとなった。なお、同社の15日の終値は93.1ペンス(約149円)だったため、およそ18%のプレミアムで売却した計算となる。ABGによる買収が発表された16日の終値は108.8ペンス(約174円)と大幅に値上がりした。
ABGの創業者であるジェイミー・ソルター(Jamie Salter)会長兼CEOは、「『テッドベーカー』はユニークな英国ブランドとして世界中で高く評価されている。ライセンス、卸、小売り、デジタル、戦略的なマーケティング・パートナーシップなどにフォーカスしたビジネスモデルでブランドの基盤を強化し、さらに成長させていく」と語った。取り引きの成立は第4四半期ごろの見込み。ABGによれば、買収後は「テッドベーカー」の知的財産を管理する事業と、実店舗や卸、ECなどの事業を分離し、前者をABGが、後者は別の会社が運営する予定だという。
ABGはこの10年間で30以上のブランドを買収しており、20年は「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」「フォーエバー21(FOREVER 21)」のほか、米「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」を傘下に収めた。21年5月には、米アパレル運営会社スパーク・グループ(SPARC GROUP)とともに「エディー・バウアー(EDDIE BAUER)」を、同年7月にはPVHコープ(PVH CORP)が保有していた「ヴァン ヒューゼン(VAN HEUSEN)」「アイゾッド(IZOD)」「ジェフリー ビーン(GEOFFREY BEENE)」「アロー(ARROW)」を、同年8月にはアディダス(ADIDAS)の傘下だった「リーボック(REEBOK)」を買収している。