リセール、リユースなど、二次市場が活発になればなるほど、スニーカーの偽物問題が浮き彫りになってくる。フェイク品のクオリティーは、もはや本物と見分けが付かないレベルなのに、鑑定士の育成には時間がかかり過ぎて、追いついていないのが現状。うっかり偽物のスニーカーを掴まされるなんてのは世の常である。そんな今、 AIを使った次世代の真贋鑑定サービスが話題だ。AIは人智を超えた革命となるか、はたまた人にしかできない“心眼鑑定”は生き残るか?(この記事は「WWDJAPAN」2022年8月22日号からの抜粋です)
「アンストリート」がスニーカー売買サービスをスタート
スニーカーやストリートの最新情報などを発信するメディアアプリ「アンストリート(UNSTREET)」が、スニーカーを売買できるC to Cフリマ機能を実装した。これまでのスニーカー売買は、「メルカリ」や「ヤフオク」のような完全個人間での取り引きか、「スニダン」や「ストックX」のように物流倉庫に一度送って、鑑定士の目を通してから取り引きするのが一般的だった。フェイク品の可能性もあるスニーカーの売買で、個人間での取り引きは不安。一方で鑑定士による鑑定は、人材や場所など、そこそこの事業規模が必要で日数もかかる。
そこで「アンストリート」では、あくまで個人間での取り引きに、 AI画像鑑定を導入。その先駆けであり、偽物検証動画でもおなじみのユーチューバー、白龍さん率いる「チェックグッズ(CHECKGOODS)」と業務提携することで、安心安全な売買を可能にした。そもそも、これまで人が時間をかけて鑑定していたモノをスマホの画像だけで、しかもものの数秒で判断できるのかと、思わず信ぴょう性を疑ってしまうけど、その精度は予想以上だ。
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【出品オファー& AI鑑定】「アンストリート」ではスニーカーの発売情報とは別に、リリースに反応してプッシュ通知する“リストック通知”機能を備えていた(現在は「キラーパス」という別アプリに移行)。買うことに重点を置いたアプリだから、ユーザーは、“持っているもの”や“欲しいもの”を図鑑のようにリスト化でき、既に“持っているもの”は20万件以上、“欲しいもの”は200万件以上のデータがある。それを生かして、“欲しい人”が“持っている人”にオファーできるマッチング機能を設けた。出品オファーが成立すると、出品者は指定された箇所の実物の画像を投稿し、「チェックグッズ」による AI画像鑑定に進む。鑑定はたった5秒で完了。鑑定結果を待って、本取り引きへ。
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【鑑定結果】鑑定結果は、複数の鑑定ポイントの正規品との一致率で総合的に決まる。総合的に判断するのは、正規品にも個体差があるため。99%以上の正答率だとか。
鑑定マスター!白龍さんに聞く偽物市場の闇
今年2月に正式ローンチした「チェックグッズ」は、某スニーカーユーチューバーが“鑑定の精度を暴く”目的で、フェイク品の“ダンク”を複数の鑑定サービスに申し込み、試したところ、ほとんどの鑑定士の目をすり抜ける事態に。にもかかわらず、なんと画像だけで偽物と判定したことをきっかけに、サーバーがパンクするほど一気に知名度が上がった。数十万件の正規品と数万件のフェイク品の2つデータベースを所有し、ブランド品やストリートウエアの鑑定も可能。中国にも強いネットワークを持ち、各偽物工場の特徴まで把握。人間に依存しないAI画像鑑定サービスを提供する。
「世界中のフェイクスニーカーのほとんどが中国産で、その99%が福建省の莆田市というところで作られています。莆田市にはナイキなどのメーカーの正規工場がいくつもあり、各サプライチェーンもある。莆田市だけで、2020年の1年間で20億足のスニーカーが作られたとか(正規品も含む全て)。フェイク品のクオリティを大きく分けると、S、A、B、C。BとCは僕たちが見ればすぐに分かりますが、SとAはスーパーコピーのレベルです。中国では、このSとAを「純原級」(2万〜3万円程度)と、BとCを「公司級」(5000〜1万5000円)と呼び2種類に分けられます。流通しているほとんどのフェイク品は公司級ですが、純原級は名前の通り、メーカーと同じサプライチェーンから仕入れた純粋な原材料を使っていて、一見、見分けがつきません。さらに純原級の中でも工場によって得意分野が異なり、例えば、今回用意した“トラヴィス・スコット×フラグメント”の“エア ジョーダン 1(AJ1)”のS級は、“AJ1”に特化した「LJR」という工場で作られたものです。LJR産は偽物の中でもものすごく高い水準で作られていて、販売価格もプレ値です。そのレベルのスーパーコピーは、外観ではほぼ分からないため、鑑定ポイントで判定します。その鑑定ポイントをいくつか解説します」。
知って得する鑑定ポイント
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どんな新作が発売されようとも、メーカーに共通しているポイントが必ずあり、そこから見るのが鑑定の基本だ。正規品とS級を比べてみた。
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【内タグのフォント】
鑑定でまず大事なのが、サイズや品番が記載してある内タグで、フォントの微差をまず確認。これは「9」がほんとに若干違うらしい。触れば生地の質感も本物とは異なる。あとは工場の略語が記載してあるため、その工場の特徴と一致しなければ、“怪しい”という判断基準に。
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【中底の縫い目】
中底の縫い目がフェイク品の方が雑に見えるが、正規品にもかなり個体差があるので一つの判断基準に過ぎない。正規品より穴が綺麗過ぎたり、糸の色が白過ぎたり、テープの色が本物より白かったりと、いくつかのポイントを見て、総合的に判断する。実は、“穴が綺麗過ぎる”のはLJR工場の特徴。毒をもって毒を制すわけだ。
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【インソールの糊付け】
インソールの糊付けは、現在でも偽物工場に完全に再現されていない最大の突破口だ。写真の右側が正規品でS〜C級までが順に並ぶ。正規品に比べ、フェイクは線がムラっぽい。ただし、正規品にも糊の付け方が複数ある。インソール無しのスニーカーは絶対に買ってはダメ。
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【ふくらみ】
画像だけでは外観で判断するのが難しいのだが、実は手に取るとよく分かるのは、履き口の外側・内側のふくらみだ。ここのふくらみが本物と偽物では若干異なる。偽物は、なんだかのっぺりしていて安っぽい。
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【紙タグ】
実はS級には国内正規品の証である紙タグが付いていない。一方、B級やC級には、紙タグが付いているものが多いとか。フォントも紙質も違うので、本物と全く異なる。
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【シューズボックス】
シューズボックスはクオリティーの差が出やすい。日本で流通しているスーパーコピーはあえてボックス無しのものも多いそう。本物のボックスに入れ替えている場合もあるそうなので、注意が必要。