「WWDJAPAN」ポッドキャストシリーズの連載「考えたい言葉」は、2週間に1回、同期の若手2人がファッション&ビューティ業界で当たり前に使われている言葉について対話します。担当する2人は普段から“当たり前”について疑問を持ち、深く考え、先輩たちからはきっと「めんどうくさい」と思われているだろうな……とビビりつつも、それでも「メディアでは、より良い社会のための言葉を使っていきたい」と思考を続けます。第28弾は、【映え】をテーマに語り合いました。「WWDJAPAN.com」では、2人が対話して見出した言葉の意味を、あくまで1つの考えとして紹介します。
若手2人が考える【映え】
「映(ば)え」は、映(は)えるという動詞が連濁化して、見栄えの良いものを表現する言葉。若者を中心にSNSや写真、目にしたときに全体的に良く写っている状態などを指すものとして「映え」という概念が普及するようになった。2017年の流行語大賞にノミネートされている。風景やスポット、食べ物など、写真に残したときに美しいものを対象に使う。
一方、映えることを優先して、その瞬間や食べ物の場合はその味などを楽しんでいないのではないかという批判の意を込めて、「インスタ蝿」という言葉で「映え」を楽しむ人を揶揄する言葉も生まれた。ただ、実際に「映え」の対象を粗末にする人は先行するイメージほど多くはなく、「映え」を楽しむことがその瞬間を楽しむ文化として浸透している。
2017年ごろの「映え」は、建物にフォトスポット的アレンジを加えたものなど、作られた場所が主流だった。トレンドのスポットやものとして多くの人が同じものを「映え」の対象としていた。しかし22年現在は、自分達でアレンジ・カスタマイズできるものや、生活の延長にあるような、余白のある「映え」が人気となっている。例えば、推しの名前を入れられるドリンクを撮ったり、あえて「うんこミュージアム」に行ったりするなど、自分の美的価値観を表現するようになっている。
【ポッドキャスト】
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ポッドキャスト配信者
ソーンマヤ:She/Her。翻訳担当。日本の高校を卒業後、オランダのライデン大学に進学して考古学を主専攻に、アムステルダム大学でジェンダー学を副専攻する。今ある社会のあり方を探求すべく勉強を開始したものの、「そもそもこれまで習ってきた歴史観は、どの視点から語られているものなのだろう?」と疑問を持ち、ジェンダー考古学をテーマに研究を進めた。「WWDJAPAN」では翻訳をメインに、メディアの力を通して物事を見る視点を増やせるような記事づくりに励む
佐立武士(さだち・たけし):He/Him。ソーシャルエディター。幼少期をアメリカ・コネチカット州で過ごし、その後は日本とアメリカの高校に通う。早稲田大学国際教養学部を卒業し、新卒でINFASパブリケーションズに入社。在学中はジェンダーとポストコロニアリズムに焦点を置き、ロンドン大学・東洋アフリカ研究学院に留学。学業の傍ら、当事者としてLGBTQ+ウエブメディアでライターをしていた。現在は「WWDJAPAN」のソーシャルメディアとユース向けのコンテンツに注力する。ニックネームはディラン