なかなか収束しない新型コロナウイルスはもちろん、ウクライナ情勢に伴う航空機の減便や円安など、海外視察はまだまだハードルが高い。そこで、国内の感染状況も幾らか落ち着いた春以降に海外出張を再開した業界人と、現地駐在員に世界の今を直撃。人々の活気、それを下支えする国の対策、社会課題への向き合い方にも注目したい。今回はヨーロッパ&アジア編。(この記事は「WWDJAPAN」2022年8月8月22日号からの抜粋に加筆をしています)
ベン
コーディネーター・モデル
【訪れた国/都市】フランス/パリ
2021年10月にパリを訪れた際は、大手の店や個店があった場所の多くが空き物件になっており、道も静かだった。しかし22年1月と6月にメンズ・ファッション・ウイークで再び渡仏した際は、空き物件もほぼなくなり、新しい店やギャラリー、レストランが増え、イベント(写真)も戻り、人々はウイルスと共存する考えのもと前に進んでいるように感じられた。“もう時間を無駄にしたくない”という雰囲気で、以前よりも挑戦的になれる環境だった。
ハリイ美江子
プーオフィス代表
【訪れた国/都市】フランス/パリ、アルル
街の空気感(写真)自体は、本音を言うとコロナ前のパリと比べて大きな変化は感じなかった。「カフェのコーヒーの値段が上がっているな」「交通機関のリストラによる人員不足で、遅延や混乱が多いな」「PCR検査(フランス市民は無料)のスポットが至る所にあるな」といった変化は目についた。人々はとてもポジティブだった。不安に目を向けるのではなく今を楽しむ、そのエネルギーは日本にも広まってほしいと思った。
佐藤考輔
LVMH ファッション・グループ・ジャパン ジバンシィ ジャパン プレジデント
【訪れた国/都市】フランス/パリ
マシュー・ウイリアムス(Matthew Williams)による初のメンズショーのため渡航。日本からの顧客の参加は1組だったが、現地で共にショーを体験する大切さ(写真)を感じた。ショーに来場した編集者、スタイリストは約10人程度で、ジバンシィのトップマネジメントが一堂に会してコミュニケーションを取る機会になった。パリは一部の国からの観光客が戻りつつあり、百貨店はにぎわっていた。ウクライナ情勢により、直行便が減り、飛行時間は延びた。欧州ではキャンセルが相次ぎ、帰国日の変更を余儀なくされた。
高下泰幸
カンペールジャパン社長
【訪れた国/都市】フランス/パリ、イギリス/ロンドン、スペイン/バレンシア、マヨルカ島
街に人が戻り、活気に満ち溢れている(写真)。予想以上の盛り上がりに驚いた。人の数はコロナ前より少ないかもしれないが、この2年間の呪縛から解放された空気感から、コロナ前以上の活力を感じる。ただ1点明確に違うのは、あんなにいたアジア人観光客が全くいなかったこと。特にルーブル周辺の観光地ではそれが顕著だった。ほかにはないアイデンティティーを持っていたり、軸がしっかりしているブランド・施設が生き残り、勢力を広げた印象。 日本に比べ、あらゆるものの価格が高く感じた。円安の誤差ではない、圧倒的なレベルでインフレが進んでいる。人々は欧州内を旅行したり街に繰り出したりは積極的にするが、店を回遊しても買い物はあまりしない。この2年間、モノはECでも買えたが、コトは経験できなかったため、今は後者にお金をかけていると思われる。街の中心地は「車両通行禁止」になっているところが多く、車の街への侵入を減らす試みが加速度的に実施されていた。日本の環境対応の遅れを感じた。ファッション的には、アクティブかつスポーティーで露出の多いスタイルがやたら目に付く印象。異常な猛暑による瞬間的な現象かもしれない。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。