「グッチ(GUCCI)」や「バーバリー(BURBERRY)」のビューティ製品を手掛ける米化粧品メーカー、コティ(COTY)はこのほど、スキンケアに注力する計画を発表した。これまでフレグランスやメイクアップが同社の主力カテゴリーだったが、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)や妹のカイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)の化粧品ブランドの好調を背景に今後さらにスキンケアを強化する。
スー・ナビ(Sue Nabi)最高経営責任者(CEO)は投資家に向けて、「これまでのリーダーや管理職はスキンケアにあまり目を向けてこなかった。非常に高い競争力が求められるスキンケア市場において戦略を立てられず、コティのスキンケアブランドをうまく育てることができなかった」と明かした。しかし、スキンケアブランド「オルヴェーダ(ORVEDA)」を共同創設したほか、ロレアル(L’OREAL)に約20年間在籍し「ランコム(LANCOME)」のブランドプレジデントなどを務めた経験を持つナビ最高経営責任者は、今こそスキンケアカテゴリーで戦う体制が整ったと自信を見せる。2025年度までにスキンケア売り上げを倍増させ5億〜6億ドル(約715億〜858億円)を達成し、26年以降もさらなる成長を目指すという挑戦的な計画を掲げた。「3年で売り上げを倍増させることは決して簡単なことではない。グローバルのインフラを整え、イノベーションを続ける必要もある。一方で、5億〜6億ドルは大手企業のスキンケアブランドでは売り上げのほんのわずかに過ぎない。われわれにとっては非常にアグレッシブな計画だが、同時に現実的な数字であることを示したい」。実際、エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)の最新の決算発表では、スキンケアの売り上げが約100億ドル(約1兆4300億円)だった。
コティのスキンケア強化戦略には、現在北アメリカで展開中のキム・カーダシアンの新スキンケアライン「スキン・バイ・キム(SKKN BY KIM)」に加え、カイリー・ジェンナーのブランドのスキンケライン「カイリー・スキン(KYLIE SKIN)」のヨーロッパ・中東・アフリカへの進出を含む。「カイリー スキン」はオーストラリアへの展開も視野に入れるが、アジアは検討していないという。アジアでは、すでに進出しているスキンケアブランド「ランカスター(LANCASTER)」に注力する。ナビCEOは「カイリーのブランドは欧米でかなり成功している。最近、メキシコやブラジルなど中南米に進出したほか、トラベルリテールでもメイクアップが好調だ。全てのブランドにおいて、むやみに拡大せず成功できる国や地域を着実に強化する」と述べた。
今年発売した「スキン・バイ・キム」は、予測を上回る売り上げを達成しているという。中でも人気は、製品のフルラインアップを収めたセット(673ドル、約9万6200円)だ。コティは19年にカイリーのコスメブランド「カイリー・コスメティクス(KYLIE COSMETICS)」の過半数株式を6億ドル(約858億円)で、20年にキムのコスメブランド「KKWビューティ(KKW BEAUTY)」の株式の20%を2億ドル(約286億円)で取得している。
なお、コティは22年7〜9月期の売上高を前年同期比6〜8%増から同8〜9%増に上方修正すると発表した。欧州、アメリカ、トラベルリテールにおけるプレステージ・マスブランドの復調を理由に挙げた。