「必然的に黒字基調になった」と話すのは、三陽商会の大江伸治社長。2023年2月期の業績予想を上方修正し、営業損益が16億円の黒字(修正前は12億円の黒字、前期実績は10億円の赤字)になりそうだと発表した。本業の儲けを示す営業損益が黒字になるのは、15年6月に売上高の半分を占めていた「バーバリー」のライセンス事業を終了して以来、7期ぶりとなる。
屋台骨を消失してから3人の社長が再建できずに退任し、20年5月に三井物産出身でゴールドウインのV字回復の立役者だった大江氏が火中の栗を拾った。それまでの経営トップはバーバリーの売り上げの穴を埋めるため、後継ブランドで無理をして売り場を作り、在庫をふくらませてしまった。一方、コロナ禍で就任した大江氏は、隅々にまで目を配り、販管費のコントロールや在庫の適正化といった事業構造改革を徹底させた。
6日に行われた22年3〜8月期決算説明会に登壇した大江社長は、「実力値に基づいたトップライン(売上高)で損益分岐をクリアする。就任2年で達成の見通しがつき、3年目(の今年)はその基盤の上でやってきた」「必然的に黒字基調になった。実行すれば必ず結果につながる」と胸を張った。
業績の見通し以上に社員の意識が変わったことが重要だという。「社員一人一人が自律的にPDCAを回して成果を出した。その積み上げで自信も生まれ、先に向けてのモチベーションも高まった」。バーバリーショックとコロナによる止血にめどをつけ、今後の焦点は成長戦略に移る。