「ウジョー(UJOH)」は、2021-22年秋冬シーズンにパリ・ファッション・ウイークの公式スケジュールに加わって以来初となるリアルショーを開いた。コロナ前にはパリコレ期間中にオフスケジュールでショーを行ったこともあるが、この数年はパンデミックの影響を受けて映像でコレクションを発表。「ムービーだけではやり切れないと感じる部分があった」と明かし、今回を「デビュー戦」ととらえる西崎暢デザイナーは、ブランドらしいスタイルを軸にしつつ、新たな要素を盛り込んだ。
提案の中心となるのは、得意とするパターンカッティングを生かしたテーラリングやシャツのレイヤード。ウィメンズはクロップド丈にカットしたり、コルセットのようなレイヤードアイテムに仕上げたり。メンズも丈の短いメスジャケットを仕立てたり、前見頃に大胆なカットを入れたりすることで、共布のストラップが垂れ下がるシャツを覗かせる。ドレスはドローストリングを引っ張って作るラッフルやサイドのギャザーホールがポイントになり、全体的に軽やかさが際立った。
「パターンを引いている時に、自分の手が無性に気になった」という西崎デザイナーが表現を試みたのは、人の手による不均一さに感じる力強さ。そんな手仕事の要素を、ジュエリーアーティストの三野彰太との協業によるハンドメードのブローチやイヤリング、バングルをはじめ、継続的に取り組んでいるアーティストの佐々木香菜子によるハンドペイントプリント、越前の手漉き和紙や京都の箔押しちりめんといったユニークな素材で取り入れた。結果的に全ての要素が完全に溶け合っていたとは言い切れない部分もあるが、コンフォートゾーンにとどまらず挑戦する姿勢には、世界での勝負を続けていく意欲を感じる。