ファッション

ジュエリー業界50年、デザイナーのホアキン・べラオが生み出すタイムレスなデザインの秘密 

 1970年に創作活動をスタートし、ジュエリー業界歴50年超というキャリアを持つのがデザイナーのホアキン・べラオ(Joaquin Berao)だ。82年に自身の名を冠したブランド「ホアキン べラオ(JOAQUIN BERAO)」を設立。彫刻作品、建築、音楽、自然を彷ふつとさせる洗練された造形美とタイムレスなデザインが特徴で、高品質なスターリングシルバーと18金ゴールドを用いたリングやイヤリング、バングル、ネックレスなどを手掛けている。デザインから製作、最後の磨き上げまで、マドリッドにある自社工房の熟練職人が手作業で行い、スペイン王室も顧客に抱えているという。

 日本には90年に上陸し、一時はエフ・ディ・シィ・プロダクツ傘下で運営されていたが、2014年に完全撤退。4年のブランクを経て、18年に商品企画、ブランディングなどを手掛けるセスタンテが運営する形で再上陸を果たした。現在は西麻布の直営店と公式オンラインストアで販売している。このたび、3年ぶりに来日したというベラオに話を聞いた。

WWD:デザイナー人生を振り返って。短命で終わるブランドが多い中で、50年続けてこられた理由は?

ホアキン・ベラオ(以下、ベラオ):どのブランドにも共通することですが、「ホアキン べラオ」のジュエリーだというのが一目で分かることが重要だと思います。常にタイムレスなデザインであること、若い人から年齢を経た人まで、幅広い層の人が身に着けられるジュエリーであるということも理由ですね。

WWD:タイムレスなデザインを生み出す秘けつは?

ベラオ:制作を重ねていく中で、デザインの余計な飾りを取り除いていきます。そうすることでより本質的な部分が現れてくるんです。“シンプルさ”とは複雑さを解き明かしたもの。身に着ける人の心を動かすような、長きにわたる道のりや進化などがデザインに表現されているのではないでしょうか。

記憶の断片がクリエイションにつながる

WWD:デザインはどのように思いつく?

ベラオ:文化や建築、旅行、生きること、人々との会話など、さまざまな物事をよく観察することで導き出されることが多いですね。自分が見たり聞いたりした記憶の断片が積み重なって、創作に結び付いているのかもしれません。また、自然からインスピレーションを得ることもあります。花に宿るエネルギーや大地が持つ生命力など、自然はデザインをする上で欠かせない要素を持っているんです。人々が気がつかないであろうそれらの要素を、自分なりに解釈してデザインに落とし込んでいます。

WWD:「イセタンサローネ」で行ったポップアップではセミカスタマイズサービスを導入した。セミカスタマイズでジュエリーを製作する際に大事にしていることは?

ベラオ:お客さんの中には、家族から受け継いだジュエリーを持ってくる人がいます。時代を経たアイテムはクラシックなデザインのものが多く、彼らの「受け継いだ」という思いを大切にしています。そんな家族の思いをジュエリーで表現しながらブランドの世界観を加えて、今の時代に合うように蘇らせたいですね。

WWD:実際に客とどのようにデザインの相談をする?

ベラオ:家族の思い出を身に着けて感じることが大事なので、どんな風に身に着けたいのかなど具体的なイメージを聞きます。クラシックなジュエリーは、ダイヤやアクアマリンなどの宝石をあしらったデザインが多いので、宝石だけを取ってリフォームすることもありますね。より彫刻的で洗練されたデザインにすることで、今ならではのジュエリーに仕上がると思います。

WWD:2年ぶりとなる新作コレクション“リネア”のテーマは?

ベラオ:“リネア(LINEA)”はスペイン語で“線(ライン)”という意味。輪郭線や地平線など、私たちの周りにはさまざまな“リネア”が存在しているということを表現しています。また、50年のデザイナー人生の中で経験したことが点と点でつながった線になり、その線が私の「これから」を体現しているとも言えるでしょう。

生きている時代を作品で表現

WWD:“リネア”の立体的なフォームからは、力強いエネルギーを感じる。

ベラオ:今回のコレクションから感じられるように、私が70年代から手掛けてきたジュエリーの数々には、その時代のエネルギーが宿っています。私は自分が生きている時代を作品で表現することを心掛けているので、身に着ける人にもそれを感じてもらえたらいいですね。

WWD:SNSやECが発達し、世界中の情報量が膨大に溢れている。その中で支持されるブランドであり続けるために必要なことは?

ベラオ:50年前と比べて、世の中にはたくさんの情報が溢れていますが、私はポジティブに考えています。そんな時代においても、「ホアキン べラオ」のジュエリーだと認識してもらえることが大切です。ジュエリーは装飾品であることから、社会的地位を象徴するものと捉えられることがありますが、身につける人の個性とセンスの良さを表現していくためのものでありたいです。

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