毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2022年10月17日号からの抜粋です)
村上:久しぶりのパリコレ取材では3つのことが気になりました。1つは「肌見せはどこまでいっちゃうのか?」。これまではブラトップだったけれど、今回はブラジャー。おっぱいが見えてもいといません。一方「コペルニ(COPERNI)」のスプレードレスには「なぜ女性だけが全裸なんだ」という反応もあり、ボディー・ポジティブの流れとはいえ、日本の市場はどこまでいけるのか?なんて考えました。
藪野:「クレージュ(COURREGES)」などの勢いやストリートでの着こなしを見ると、若い人たちは観点が違うと感じますね。表現の一つとして肌見せもありだと思いますが、皆が自分の体を肯定し、自信を持てるわけでもないというのも事実。多様なモデルが登場する今、肌の露出だけではない体の美しさの表現もあると感じます。
村上:もう1つ気になったのは、社会問題に対してどこまで切り込むべきか、その伝え方について。「クロエ(CHLOE)」が一番衝撃的でした。「原子力エネルギー、賛成!」を表現したショーで意欲的だったけれど、共感して「クロエ」を買う人はいるのかな?センシティブな問題に向き合いメッセージを発信する勇気と、その表現方法のバランスは全てのブランドにとっての課題になりますね。
藪野:伝え方って重要ですよね。僕らはプレスリリースやデザイナー本人の話からすぐに意図を知ることができますが、ショーの動画だけを見た人や店頭を訪れた人に肝心のメッセージが届かなかったらもったいない。もちろん我々もそれを伝える役目を担っているわけですが、服であるからには「素敵!」や「欲しい!」と思わせられるかが大事です。
村上:3つ目は伊勢丹外商部員の活躍。紙面にも登場いただく吉村(朋代)さんがオシャレなことにまずビックリ(笑)。そして、当たり前のようにスマホを逆さにして、脚が長く見えるように撮影するなど、アテンドする顧客へのホスピタリティーに感動しました。彼女が撮った画像はSNSで拡散されるし、ブランド側もすごくウエルカムで、一つのエコシステムとして成立しそう。
藪野:VIP顧客は実際にブランドを愛用しているし、その歴史やストーリーも理解しているから発信に説得力もありますよね。