オーストリアを拠点とするクリスタルメーカーのスワロフスキー(SWAROVSKI)は今年7月、1895年の創業以来、初めて創業家外からトップを迎えた。これまで一族経営が続き、2020年4月から21年10月末まで同社を率いていたロバート・ブッフバウアー(Robert Buchbauer)前最高経営責任者(CEO)も一族の出身だ。しかし同社はここ数年、新たな成長戦略に沿った事業再編に取り組んでおり、オーナーと会社の経営を切り分けることを決定。“新生スワロフスキー”の舵取りを託されたアレクシス・ナサード(Alexis Nasard)新CEOに、今後の戦略などを米「WWD」が聞いた。(この記事はWWDジャパン2022年10月31日号からの抜粋です)
7月4日に就任したナサード新CEOは、ファッション業界のほか、日用消費財や小売セクターで豊富な経験を持つ。ビジネス特化型SNS「リンクトイン(LinkedIn)」のプロフィールによれば、プロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE)で17年、ハイネケン(HEINEKEN)で6年、チェコのシューズおよびアパレルメーカーのバタ(BATA)で5年にわたって要職を歴任。20年12月には、マーケティング企業カンター(KANTER)のCEOに就任した。
同氏は、「私はこれまで数百のブランドを取り扱ってきたが、ブランドとして成功するにはキャラクターや特徴があることが大切だ。一方で、やはりプロダクトが全てともいえる。『スワロフスキー』には、その両方がある。誰をも魅了して笑顔にしてしまう、大胆できらきらと輝く製品を持っているのは大きな強みだ」と分析する。「製品の魅力を顧客に直接伝えられる店舗は、ワクワクするような楽しい体験を提供することが何よりも重要。宝探しのように店内を回遊し、新たな発見をしてもらうことで、衝動買いへと導いていく。基本中の基本だが、これをおろそかにしてはならない。当社のように必需品を売っているわけではない場合、人生の喜びや楽しみ、自分へのご褒美などの要素がキーワードとなる」。
この言葉通り、今年のホリデーシーズン向けのキャンペーンはカラフルで遊び心に満ちている。5月にブランドアンバサダーに就任した人気モデルのベラ・ハディッド(Bella Hadid)をメインキャラクターに起用。背中に着けた大きなピンク色のリボンで“小さな妖精”に変身したベラが、パステルカラーの箱に座り、巨大なクリスタルのネックレスやブレスレットと戯れるというプレイフルなストーリーとなっている。
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