大丸松坂屋百貨店は、値ごろなアートを中心とした展示販売イベント「アートヴィラ マーケット(ARTOVILLA MARKET)」を11〜13日の3日間、東京・渋谷のギャラリーLoftworkで開催している。展示約100点の中には、著名作家の作品でありながら数万円で購入できるものも用意。さらに、アートにファッションや映画、音楽などを絡ませた体験コンテンツで魅力を多角的に掘り下げ、アートに触れたことのない若者層の取り込みを図る。
展示は、同社が1月に立ち上げたアート特化のウェブメディア「アートヴィラ」の関連イベントとして実施。会場には、両目が「×」のキャラクターで知られる米アーティストのKAWSや、1980年代のポップカルチャーに着想した女性のイラストが若者に人気のイラストレーターKYNEといった、アートに明るくない人でも一度は目にしたことがあるような作家の作品をそろえた。
企画・運営は、同社の新規事業開発を担う経営戦略本部・デジタル事業開発担当の20〜30代の社員4人が主導する。その一員である村田俊介氏は「日本でもアートブームが言われるようになったが、アートを所有して楽しむ人は、世界と比較するとまだまだ少ない」と話す。そのような背景から、今回のイベントは“衝動買い”をテーマに、展示物の鑑賞から購入につなげるための仕掛けを施した。購入を即決できる値ごろな価格に加え、作品に付帯するQRコードからは、「アートヴィラ」のウェブページにつながり、同メディアのキュレーターによる作品解説を閲覧できる。
村田氏は新卒入社後、百貨店の美術畑ではなく、主に店舗の空間デザインを手がけてきた。「美術品の購入には作品そのものの魅力だけではなく、『アートがある日常』を想像できる展示空間の設計が必要」との考えの下、展示物同士の間隔をあえて不均等にしたり、会場の展示スペース以外に作品を設置したりと、「百貨店の美術画廊やギャラリーの既成概念にはない作品の見せ方」にチャレンジした。
期間中、会場では展示と連動したトークイベントも開催する。12日は、“アートテラー”とに〜氏とアートライター・山城有未氏を招き、現代アートコレクターとして知られる老夫婦を題材にしたドキュメンタリー作品「ハーブ&ドロシー」についての対談を実施。13日は文筆家の青野賢一氏とアートライターの小林沙友里氏が「アートなレコードジャケット」を題材に談義を繰り広げる。いずれも特設ページで事前予約が必要。