中国企業が運営するグローバルSPAブランド「シーイン(SHEIN)」は、豊富な商品ラインアップを圧倒的な低価格で販売し若年層を中心に人気を集める。小ロットで商品を生産し顧客からのフィードバックを受けたのちに大量生産に踏み切るビジネスモデルで、無駄のないサステナブルな供給体制を主張する一方で、労働環境への懸念が高まっている。(この記事はWWDジャパン2022年11月22日号からの抜粋です)
スイスのNGO団体パブリック・アイ(Public Eye)は昨年11月に、「シーイン」は現地の労働法に反して危険な労働環境で過度な残業が発生していると報告した。同団体が中国広州にある1000の生産拠点のうち17カ所を調査したところ、いくつかのサプライヤーは小規模かつ非公式で、規制されていない作業場で運営されていることが分かった。「シーイン」の商品を多く生産している広州の工場では、非常口がなく、鉄格子の窓やふさがれた階段なども発見された。調査員は、「あの場所で火事が起きたらどうなるのか、考えたくもない」と話す。
パブリック・アイが取材した従業員は、毎日11〜12時間、週に75時間働き、休みは月に1日しか取得していなかった。これは、「シーイン」が定める自社の行動規範に違反しているだけでなく、労働時間を週44時間、残業を月36時間までに制限する中国の労働法にも違反する。加えて、労働者は週に少なくとも1日の休暇を取る義務がある。従業員の中には貧しい地域から出稼ぎに来ている人も多く、長時間労働を進んで行っている場合があるとパブリック・アイは報告している。
賃金は、従業員の生産枚数に応じて支払われる出来高制。複雑な製品にはより高い賃金が支払われる仕組みだ。ある従業員によると、1枚当たりの賃金はほかの職場と比較して「かなり低い」が、求められる品質基準も「特別高いわけではない」という。多くて1万元(約20万円)を稼げる月もあるが、時間外の割増賃金は支払われないため、その3分の1の額しか稼げない月もあるという。中国の法律で義務づけられている雇用契約書に署名していない従業員も多くいた。
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