ファッション

「バーチャルマーケット」が9回目の開催 ビューティー業界からは「マリークヮント」が初参戦

 世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット 2022 Winter」が12月3日から18日に開催される。リアルとメタバースに並行して存在する都市“パラリアルワールド”として、今季は「パラリアル名古屋」「パラリアル札幌」「パラリアルパリ」が企業出展会場となる。5回目の出店となる「ビームス(BEAMS)」や大丸松坂屋に加え、今回はビューティー業界から「マリークヮント(MARY QUANT)」、そして環境省、地方自治体など、70を超える企業が出展予定だ。11月29日に行われた発表会では、「バーチャルマーケット」の実績や今後の展開について紹介した。

「ビームス」はドレスアップを楽しむためのバーチャル製品を販売

 ファッション業界からの出店でお馴染みの顔となりつつある「ビームス」の木村淳プロデューサーはこれまでを振り返り、「当初はECサイトの延長として始めたが、実際は全く違い、バーチャルだからこそできる感動体験がある。ブランドが誇る接客術をバーチャルでも展開し、バーチャルがきっかけでリアル店舗にも来店してもらえるようになった。『バーチャルマーケット』内では、語学やコミュニケーション能力が高いスタッフ50人をバーチャルスタッフとして採用し、日替わりで接客している。バーチャルがきっかけで、リアル店舗にも来ていただいているので、新たなタッチポイントにもなった。まずは『バーチャルマーケット』内のコミュニティーに信頼されることを大切にしている」と語る。今回は「パラリアル名古屋」にバーチャルショップを構え、ドレスアップを楽しむためのスーツやシックなコート、ワンピースなどの3D商品が充実。2階にはホームセンター「カインズ(CAINZ)」とのコラボレーションコンテンツ、3階には氷でできたルーフトップバーを設置する。さらに期間中、ビームス原宿3階に拠点を設けてスタッフがバーチャルショップでのリアルタイム接客にあたるが、日時限定で同スペースを開放し、バーチャルショップを体験できる機会も提供する。

「バーチャル大丸・松坂屋」は食以外の製品を拡充

 今回「パラレアルパリ」に「バーチャル大丸・松坂屋」を展開する大丸松坂屋百貨店は、食品に加え、新たにアートや寝具も販売する。「百貨店の楽しさを知ってもらうため、仮想空間の中でも発信するべく工夫してきた。これまでに一般のインフルエンサー15人を登用し、バーチャル接客を行うことで、新たなコミュニケーションの場として展開した。結果的にバーチャル内で新規顧客が増えてきたが、”食”だけでは限界があることを痛感し、今回はアートや『ブレインスリープ(BRAIN SLEEP)』の寝具を追加している。一番高額なアート商品は『バーチャル大丸・松坂屋』に展示されているオブジェの現品で、約55万円。エレベーター内にはクリエイターのバイオグラフィーを表現した空間が広がり、3階に上がると寝具のフロアへと導く。前回とは少し違う空間設計にもぜひ注目してほしい」と田中直毅大丸松坂屋百貨店本社営業本部担当。

初参加の「マリークヮント」は製品販売のほか、
アバター無料配布などを実施

 ビューティー業界から初の参加を果たす「マリークヮント」は、「パラレアルパリ」に「マリークヮント メタバース パリ店」を出展。コスメアイテムのリアル製品と3Dモデル製品を販売するほか、トレンドメイク3種をアバターで体験できるコンテンツの実施、ブランドのアイコンであるデイジーマークの瞳を持つオリジナルアバター”MARY QUANT VKETちゃん”の無料配布を行う。陶正治マリークヮント コスメチックス社長は「数あるメタバースプラットフォームの中で最も人が集まることから『バーチャルマーケット』での展開を決めた。正直今は全てが手探りの状態で、今回はあくまでも”様子見”という心構えでいる。バーチャル接客にも興味があるが、まずはメタバース上での常識を体験し、今後の施策へと繋げていきたい。バーチャル上での接客が可能になれば、年齢や性別などを問わずさまざまな人が働きやすくなる。また、コスメショップに入りにくいという男性でもバーチャルであれば挑戦しやすいかもしれない。一方でメタバース上ではまだ、コスメ販売の成功事例が少ないため、今後いろいろと模索していきたい」と意欲的だ。

省庁から初参加の環境省は
若いユーザーに向けモデルルームやふるさと納税を紹介

 省庁からは環境省が初参加し、「パラリアル札幌」内すすきのエリアに、脱炭素社会が実現された”未来の家庭のモデルルーム”を展示。脱炭素や環境対策に対し、ポジティブなイメージを発信するほか、ふるさと納税を利用したことがない人に向けてわかりやすくシミュレーションするコンテンツを実施する。

2023年夏「バーチャルマーケット」のリアル開催が決定

 イベントの締めくくりには、「バーチャルマーケット」を主催する舟越靖HIKKY代表取締役が「リアルとバーチャルを本当の意味で繋ぎ合わせ、周囲を巻き込みながら全力でチャレンジしていく」と宣言。さらに、ソリューションサービス「アンリンク(unlink)」の展開を報告した。「アンリンク」はソニーから発売されたモバイルモーションキャプチャー”モコピ(mocopi)”(オープン価格、23年1月下旬発売予定)と連携することで、リアルとバーチャルの境界線をより簡単に超えたコミュニケーションが可能だ。誰でもスマートフォンでモーションデータをメタバース上に送ることができ、これまでハードルとされていたコスト面や操作の複雑さを払拭し、規格の自由度を広げることができる。

 これを踏まえ、2023年夏にバーチャルと現実都市が交錯する「バーチャルマーケット」のリアル開催が決定したことを発表。第一弾となる秋葉原では、過去に実施済みの「バーチャル秋葉原」の世界をリアルでも拡張し、量販店のスタッフなどに「アンリンク」を実装してもらうことで、バーチャルとリアル両方の接客を行なう予定だ。

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