小学館の「オッジ(oggi)」は今年、創刊30周年を迎えた。現職に就任して10月で5年目の塩谷薫編集長は、「30年続くブランドづくりは、すごいこと。メディアの姿は色々変わってきたけれど、『オッジ』と聞けばみなさん『あぁ、あれね』と思っていただける。その価値を感じています」と話す。
「メディアの姿は色々変わる」と話す通り、塩谷編集長は「紙媒体だけにはこだわらない」と明言する。そう割り切れる強さの源泉は、「キャンキャン(CanCam)」時代の経験にあるようだ。「現場時代に“エビもえ優”ブームがありましたが、私が編集長になった時は『キャンキャン』って何?を再定義しなければならない時代でした。そこでナイトプールなど、ブランドを体験できるイベントを開催。いろんなフックやタッチポイントを作る必要性を学びました」という。その1つが「デジタル、そしてSNS。特に今年は、渡邉(恒一郎)がウェブの編集長に就きました。デジタルで存在感をさらに確立できたのは、大きいと思っています」と続ける。
コンテンツの幅も広がった。塩谷編集長は、「読者にはジャケット姿でしっかり働き、同僚に慕われている女性が多い。一方で『何が流行っているのかを知りたい』というミーハーな気持ちも持ち合わせています。好奇心のバランスが良いんです。だからエンターテインメントも必要。アーティストに『働く』について聞いてみるなど、『オッジ』らしくコンテンツの幅を広げています」。
渡邉編集長の就任やプラットフォームからコンテンツに至るまでの拡大も手伝い、「Oggi.jp」も好調に推移している。サイトの月間UUは、約900万。紙媒体の電子版はキンドルストアの売れ筋ランキングで首位に輝くことも多く、dマガジンでも順調だ。渡邉編集長も「紙の部数だけにこだわるのではなく、ある人はキンドル、別の人はdマガジン、また別の人はインスタグラムなど、それぞれらしく、時々に応じて『オッジ』を楽しんでくだされば。UUの数を考えると、ターゲット世代の100人に1人は、何らかの形で『オッジ』に触れているのでは?」という。塩谷編集長は、「デジタルに積極的になって、Z世代のユーザーも増えました。ちょっと素敵なもの、たとえばハイブランドの10万円台の新作や気の利いた手土産リストは、紙媒体を読まない若い世代にも好評です。ずっと『オッジ』を愛してくださっている、40代以上の女性もたくさんいらっしゃいます」。そんなユーザーの電子メディアでの楽しみ方も含め、塩谷編集長は「(部数やPV、UUだけでは測れない)“総ふれあい時間”みたいな指標があれば、『オッジ』の強さが可視化しやすくなるのかも」と笑う。
次に取り組むのは、30周年を祝う意味も込めた数々のイベントだ。「来夏に開催予定の“『オッジ』フェス”のため、すでに会場は押さえました(笑)。音楽連載が飛び出した形の音楽フェスに、試着大会、イエベ/ブルベや骨格診断などを組み合わせたいなぁ……と妄想したり。好きなことは色々あるけれど、『オッジ』らしく都会でカスタマイズされたものを楽しみたいユーザーに届けば」。2人は、「選択肢が多い時代だからこそ、同じ価値観を持つ友人と出会いたい欲求が高まっています。これからの『オッジ』は、働くことで社会とつながりたい読者同士を媒介する存在になりたいと思っています」。
紙媒体からデジタル、そしてSNSやイベント、他社のコンサルティングまでビジネスを拡大し続けるメディアの編集長に話を聞きました。
小学館
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