松本恵奈(まつもと・えな)/クラネデザイン代表取締役 兼 クリエイティブディレクター
2015年2月にクラネデザインを設立。“オリジナル スタンダード”をコンセプトにしたブランド「クラネ」をローンチ
クラネデザイン(東京、松本恵奈社長)が運営する「クラネ(CLANE)」は、2023年1月期の売上高が40億円前後で着地する見込みとなった。これはコロナ前の20年1月期(13億円)と比較して3倍以上の伸長率だ。コロナ禍の傷が癒えないブランドも多い中、リアルクローズ市場で際立った成長を見せる。(この記事はWWDジャパン2022年12月12日号からの抜粋です)
コロナ禍を経て、SNS上でいかに存在感を発揮できるかが消費者のブランド認知や購買に直結するようになった。「クラネ」はその状況下における顕著な成功例でもある。コロナ禍直後は業績を落としたが、松本が自身のYouTubeチャンネルを開設するなど発信を強化したことでV字回復した。
20年1月期以降、直営4店(ルミネ新宿、伊勢丹新宿本店、表参道ヒルズ、ルクア大阪)の売上高は、年平均約1.5倍、ECは1.8〜2倍ペースの成長率で推移している。同ブランドはルミネ新宿で年2回、新作の先行受注会を実施しており、8月に実施した秋冬の受注会は「常に30人程度の並びが出る」ほどの盛況だった。22-23年秋冬シーズンも前年比57%増と好調。消化率は11月末時点で85%を超え、「セールで売るものがない」と話す。
一時のブームにとどまらず継続的な成長を続ける最大の理由は、顧客(主に20〜30代の女性)が買うべき“説得力”のある服作りができているからだ。23年春夏はクラシックなムードに、ライトブルー・グリーンやサーモンオレンジなど透明感のある差し色で「肩の力が抜けた強さ」を表現する。松本は「ランウエイトレンドや他ブランドの動向は別段意識していない」と前置きした上で、「『こういう着方が正解』という押し付けがましい服は求められていない」と語る。その考えは、この日に松本が着用した春夏新作の装いにも表れている。ジャケット、ビスチェ、パンツは端正な3ピースとして着ることもできるが、ジャケットにはジップを随所に施し、袖を開けて肌をのぞかせれば艶っぽい雰囲気になる。程よく肩が落ちるシルエットや、シルクネップのオリジナルの生地など、日常からきれいめまで着られるバランスに整えた。
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