「WWDJAPAN」のソーシャルエディターは毎日、TwitterやFacebook、Instagram、そしてTikTokをパトロールして、バズった投稿や炎上、注目のトレンドをキャッチしている。この連載では、ソーシャルエディターが気になるSNSトレンドを投げかけ、業界をパトロールする記者とディスカッション。業界を動かす“かもしれない”SNSトレンドの影響力や、投稿がバズったり炎上してしまったりに至った背景を探る。今、SNSでは何が起こっているのか?そして、どう向き合うべきなのか?日々のコミュニケーションのヒントにしたい。今回は、最初の炎上から1カ月、まだまだ収束しない「バレンシアガ」のホリデーキャンペーンのお話。
> 「バレンシアガ」、“児童虐待”と批判されたキャンペーンを取り下げて謝罪
> トラブル続きの「バレンシアガ」 炎上したホリデーキャンペーンのセット制作会社を提訴
ソーシャルエディター津田:「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のホリデーキャンペーンのビジュアルが児童虐待に当たると批判され、SNSでも大きく話題になっています。このキャンペーンには、首輪や手首の拘束具といったボンデージギアを着けたテディベア型のハンドバッグを持った幼児が写されており、また別のビジュアルではセットの一部に児童ポルノに関する裁判資料が使われているという指摘が多数あったことから、児童の性的消費や虐待を促しているとして物議を醸しています。
その後、同ブランドは「撮影で使用された小道具はすべて第三者が準備し、小道具の書類はフェイクであることを書面で確認していた。結果としてそれらは実在する法的文書で、テレビドラマの撮影から流用したものだった。これらの書類が使用されたことは怠慢の結果であることから、バレンシアガは訴訟を提起した。当社も監視・管理不足の責任を取る」と声明を出し、謝罪すると共に制作会社を提訴しましたが、これがまた責任転嫁だと炎上していました。話題の移り変わりが早いSNSですが、この問題は最初に炎上してから1カ月以上経った今でも続いており、世間の注目度の高さが窺えます。ロンドンの「バレンシアガ」の店舗前で抗議デモを行う人が現れたり、「#BalenciagaGate (バレンシアガの闇を暴け)」という意味合いのハッシュタグを用いたツイートが増えたり、アンチ「バレンシアガ」の動きは加速しています。児童の性的消費や虐待の描写から、悪魔崇拝(サタニズム)だとする声もあります。若干、話が飛躍している気もしますが、どんどん話が大きくなる問題がどう収束するのか、目が離せません。
記者村上:一連の騒動は、「バレンシアガ」が社会に対して自分たちのスタンスやアティチュードを表明しているからこそ、大きくなってしまったし、なかなか収束しないのでは?と思っています。「なんで?」って思うけれど、本物の法的文書を使ってしまったことも、誰かが「本物の書類を使った方が、強いメッセージが届くのでは?」と気を利かせてしまった結果ではないだろうか?そんな風に考えています。あとはうすーくかもしれないけれど、カニエ・ウエスト(Kanye West)改めイェ(Ye)のご乱心も影響しているかもしれないかな?
半年前はロシアによるウクライナ侵攻、そして2023年春夏では泥臭く時には辛い自分探しなど、「バレンシアガ」のファッションショーは洋服の発表ではなく、アーティスティック・ディレクターのデムナ(Demna)の社会に対するアティチュードやスタンスの発表と捉えています。私は共感しているんです。でも一方で、だからこそ異なる意見やスタンスの人もいるわけで、そんな人が表明してこなかった意見が一気に噴出しているのでしょう。そう考えると私はある意味、これだけのエモーションが喚起できるブランドパワーさえ感じています。
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