店舗休業を余儀なくされたコロナ期間中も、ECを主戦場としてきた新興ウィメンズブランドは、苦戦する大手メーカーやセレクトショップを横目に急成長した。SNS発信を強みに売上高40億円規模に育ったそれらのブランドが今、続々と新ブランドを立ち上げており、企業としてステップアップを目指している。売上高1000億円を突破し、ウィメンズ市場のリーダーとして盤石なマッシュホールディングスが「スナイデル(SNIDEL)」を立ち上げてアパレル事業を開始したのは2005年のこと。新興勢力の中から、次なるマッシュが出てくるかもしれない。(この記事はWWDジャパン2023年1月16日号からの抜粋に加筆しています)
急成長ブランドの筆頭は、松本恵奈が社長兼クリエイティブディレクターを務めるクラネデザインの「クラネ(CLANE)」だ。15年のブランド立ち上げ以来、新宿ルミネ2、表参道ヒルズなどの“S級立地”のみに実店舗4店を出店してファンを広げてきたが、直近3年での成長が特に目覚ましい。松本ディレクターがコロナ禍中に始めたユーチューブなどが効いた。23年1月期の売上高は約40億円の見込み。コロナ禍前の20年1月期は13億円だったというから、3倍に育っている。
この勢いなら、出店すればまだまだ売り上げは伸ばせるはず。事実、同じ新宿ルミネ2の2階に出店するブランドでは、全国に20〜30店出店し、1ブランドで売上高100億円以上というケースも少なくない。でも、「(規模追求のために出店して)ブランドを薄めるようなことはしたくない」とクラネデザインの田畑辰雄営業部長は話す。販売の軸をECとし、出店はブランディングやショールーミングの側面が強いというのが、彼ら新興勢力の共通点。「クラネ」で店舗数をいたずらに拡大しない分、「新ブランドや新ラインを立ち上げて、29年1月期に会社全体で100億円を目指す」と田畑部長。
「5年後に会社全体で100億円目指す」
その第1弾として22年5月にスタートしたのが、松本ディレクターの実妹で、「クラネ」のPRを務めていた松本ゆりながディレクターを務める「マノフ(MANOF)」だ。デビューに合わせて新宿ルミネ2の2階で行った催事では、2週間で約2000万円を売り上げて同場所での催事の売り上げ記録を更新した。実質9カ月となる初年度の売上高は1億5000万円となる見込み。23年中に東京にまず1店出店し、「クラネ」同様に卸販売も開始する。29年1月期の「マノフ」の売り上げ目標は15億円という。
華やかなデザインの「クラネ」に対し、「マノフ」はより日常向きで、スタイルアップを意識したベーシックアイテムをそろえる。価格も「クラネ」より買いやすく設定して差別化。ワンピースで「クラネ」が2万2000円前後のところ、「マノフ」は1万7000円前後だ。「客層の中心が30〜40代であることは『クラネ』と同じだが、『クラネ』の顧客の流入は客全体の6割。4割は新客が取れている」と、ゆりなディレクターは手応えを話す。「『マノフ』の立ち上げ以降、両ブランド共通のアプリ会員数も増えており、『マノフ』から『クラネ』への客の流入も起こっていると感じる。客の取り合いがもっと起きると思っていたが、両ブランドにとっていい効果が出ている」(田畑部長)。
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