マッシュスタイルラボの「セルフォード(CELFORD)」が2月で5周年を迎える。同ブランドの2022年8月期の売上高は前期比38%増の37億円。2018年のスタート以降、コロナ禍でも右肩上がりの成長を続け、グループの中で存在感を高めてきた。今後は新規開拓の照準を富裕層に定め、さらなる成長を描く。
「セルフォード」は、オケージョン(食事会や結婚式など)を意識した華やかなワンピースが主力商品。同社の「スナイデル(SNIDEL)」や「フレイ アイディー(FRAY I.D)」といったブランドがデザインやコンセプトで棲み分ける一方、特定シーンのニーズを取り込み、根強い顧客を作ってきた。
ブランドのインスタフォロワーは約15万程度。同社の「スナイデル(SNIDEL)」(約60万)「フレイ アイディー(FRAY I.D)」(約40万)と比較すると半分以下の規模。だがフォロワーのエンゲージメントでは負けていない。インスタライブの平均視聴者数は300〜400人で、これらのブランドとほぼ同程度だ。視聴者のリアクションも大きい。ライブで紹介した商品はECの売れ行きが跳ね上がり、「1時間で150万円売れるときもある」と一(はじめ)真由子プレス。
デジタルでも“リアル”を追求
一プレスは、ブランドの強みを一言で表現するならば「『セルフォード』なら間違いないという安心感」だとする。オケージョンドレスはラックに掛かっている時に見栄えはよくとも、「似合わなければ台無し」。顧客のサイズ選びに対する目は、カジュアルウエアよりもシビアだ。
店舗での試着ができなくなったコロナ禍以降、デジタル上でも“リアル”を追求している。ECの商品ページは海外モデルや芸能人ばかりではなく、ブランドのスタッフも起用。体形や骨格の異なる複数人着用で見せ、比較検討しやすくした。
顧客からの意見は立体的に活用する。ライブ中の視聴者のコメントにはきめ細かく返信するが、それは「最低限やること」。視聴者が気になっている着こなしや商品選びについては、一プレスが公式サイトで連載する記事コンテンツとして広く発信する。デザイナーもライブに積極的に出演し、「パフスリーブのデザインはもう少し抑えめがいい」「腰の部分が窮屈」といった要望を商品企画に生かす。コロナ禍の自粛期間中は「デイリー使いできるものがほしい」という声を元に、トップスとパンツのセパレートで使えるアイテムの割合を大胆に増やしたことが、業績浮上のきっかけになった。
三越銀座店は売り上げ3倍 富裕層開拓に手応え
23年12月末時点で国内店舗数は24。今後も好立地を見極めて出店を続けつつ、既存顧客とのエンゲージメントを深化させる。ターゲットは富裕層。目の肥えた客からの信頼を、ブランドステータスにつなげる。
既存店の中でも特に優良客が多い三越銀座店は、22年8月期の売上高が出店初年度と比較して3倍に伸長した。同店で昨年3月に実施した「ハナエ モリ(HANAE MORI)」とのコラボアイテムのポップアップでは、三越伊勢丹の会員カード保有顧客のうち62%が「セルフォード」の新規客、26%が外商顧客と、新規開拓にも大きく貢献した。「百貨店の外商顧客であっても、『どこにお金をかけるか』はシビアに考えてらっしゃる方が多い」と一プレス。「たとえばバッグや靴はラグジュアリーブランドでも、洋服は素材が良ければブランドにはこだわらないという方も多い。純粋にブランドのデザインや世界観で『セルフォード』を選んでいただけている」と手応えを話す。
ブランド5周年企画として、年間を通じてさまざまなブランドや著名人との協業を計画する。4月に「マリ・クレール(MARIE CLAIRE)」とブライダルドレスデザイナーの桂由美、5月には美容家の石井美保とのコラボ商品を発売するほか、年間を通じて滝川クリステルを起用したコラボ企画を実施する。