不動産サービス会社のCBREは、大阪の繁華街である心斎橋エリアで商業不動産が二極化しているというリポートを発表した。2022年7〜9月時点の調査で、南北に並行する2本のメインストリート、御堂筋と心斎橋筋で空室率と賃料にはっきり差が出た。高級ブランドが多い御堂筋は空室率がほぼ0%、1坪当たりの月の賃料も30万円で14年の調査開始以来、最も高い値になった。一方、カジュアルファッションや飲食店が中心の心斎橋筋は空室率が19.8%、賃料は12万円で調査開始以来、最も低い値に沈む。しかしコロナによる行動制限がなくなり、秋以降は訪日客も戻っているため、心斎橋筋も回復が予想される。
御堂筋と心斎橋筋は60mほどの間隔で南北に並行して走っているが、通りの性格は大きく異なる。御堂筋は道路幅が広く、イチョウ並木の美しい景観でも知られる。また間口の広い大きなビルが多いことから、ラグジュアリーブランドや高級時計店、宝飾店、高級車のショールームなどの旗艦店が軒を連ねる。一方、心斎橋筋商店街とも呼ばれる心斎橋筋はアーケードのある歩行者専用道路で、たくさんの人々が行き交い、大衆的なカジュアルファッションや飲食店、ドラッグストアが並ぶ。CBREの調査によると、心斎橋エリアの御堂筋の商業テナントの47.0%は「ラグジュアリー」と分類される高級ブランドで、心斎橋筋の40.9%は「ファッション」と分類できるアパレルブランドだった。
コロナ前までは心斎橋筋も空室率がほぼ0%で推移していた。賃料についても心斎橋筋は訪日客の拡大を背景にしたドラッグストアの強い出店ニーズがけん引し、1坪当たりの月の賃料は御堂筋よりも高い30万円で高止まりしていた。しかし前述のように22年7〜9月時点では12万円に落ち込み、コロナ前の19年10〜12月の賃料を6割も下回った。対照的に、御堂筋の賃料はコロナ前に25万円前後だったのが、高級ブランドの出店が活発になったため22年7〜9月時点で30万円に上昇した。
近接していても高級ブランドの出店が多い通りと、カジュアルファッションの出店が中心の通りで空室率などの明暗が分かれるのは、東京でも同じだ。原宿・表参道エリアの表参道沿いは高級ブランドなどの出店が旺盛なのに対し、明治通りやキャットストリートはカジュアルファッションの回復が遅れている。コロナ以降、国内の富裕層や若者の関心がラグジュアリーブランドに向かう中、カジュアルファッションの戻りはそれらに比べると弱い。
CBREは、御堂筋については空室が少なく出店希望も多いため、賃料水準は23年も上昇する可能性が高いとしている。一方、心斎橋筋の賃料水準は23年上期には底入れし、24年上期には上昇すると予想している。