1月17日の夜、閉館後の森美術館で「#emptyMoriArtMuseum」が開催され、TikTokクリエイター16組36人が来場した。この「#empty」は来場者のいない空っぽの美術館をクリエイターが撮影して楽しむイベント。洞田貫晋一朗・森ビル文化事業部 広報・プロモーション担当は開催に先立ち、クリエイターたちに「ルールは特にない、自由に楽しんで欲しい」と声をかけた。このイベントの目的とは何なのか、そしてクリエイターたちは森美術館でどんな撮影を行ったのだろうか。
日本の現代美術の“定点観測”
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TikTokクリエイターたちが見て回ったのは3月26日まで開催中の「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」。森美術館で3年に1回開催されるシリーズ展で、日本の現代アートシーンを総覧する“定点観測”のような展覧会となっている。
会場には、既に国際的に活躍するアーティストから新進気鋭の若手まで、日本のアーティスト22組の作品が約120点も並ぶ。特に今年の展示は、コロナ禍を起点にキュレーター4人が議論した、今考察すべき3つのトピックスで構成している。コロナ禍により新たな視点で身近な事象や生活環境を考える、さまざまな隣人とともに生きる、日本の中の多文化性に光をあてるといった視点で紹介される作品は、長いコロナ禍を過ごした来場者の目にさまざまに映るよう。TikTokクリエイターたちも展示を自由に行ったり来たりし、時折談笑を挟みつつ、それぞれ作品をじっくりと鑑賞していた。
「#empty」をどう楽しむ?
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今回の「#emptyMoriArtMuseum」に招待されたTikTokクリエイターたちはアートばかりでなく、飼い猫や音楽関連の投稿をする人までジャンルは幅広く、それぞれが異なる個性を持つ。“オタ芸”と呼ばれるサイリウムパフォーマンスを行う「ゼロから打ち師始めます。」は、今回で3回目のイベント参加。「オタ芸というサブカルチャーと芸術の組み合わせに新しさを感じた。鑑賞する層も違うと思うので、新しいことができるんじゃないかと毎回楽しみに参加している」と話す。
アニメーションダンサーグループ「【公式】はむつんサーブ【オフィシャル】」は市原えつこ氏のインスタレーション《未来SUSHI》の大将に合わせたロボットダンス動画を撮影。「美術館で自由に撮らせてもらえるというのは素晴らしいし、初めて聞く企画。面白いなと思って、すぐに参加することを決めた。自分たちと共通点のある展示作品もあり、期待以上だった」とイベントを楽しんだ。
数式でアート作品を描く様子を投稿する「数式の美術館」は「新しいことをしたいという気持ちはありつつ、数式に新しいことを取り入れるのは難しい。今回森美術館に来て、作品を見てインスピレーションを受けた」という。また「他のTikTokクリエイターの方々と話して、その場でコラボレーションすることが決まった」といい、「ゼロから打ち師始めます。」とその場で撮影を始めた。「#empty」というルールのないイベントだからこそ、自由な発想の動画が数多く生まれた。
TikTokクリエイター同士の
交流も促す
@mimibi301 閉館後の美術館に大集合!@Mori Art Museum 森美術館 #emptymoriartmuseum #sponsored #六本木クロッシング2022 #耳で聴く美術館 #tiktok教室 #アート #art ♬ Near future_stylish techno_cool(952759) - Yuki Hotta
「耳で聴く美術館」というTikTokアカウントを持つAviは、普段は自身でアートを紹介する動画を投稿するが「今回はイベントに参加しているクリエイターたちに、どの作品が気に入ったかを聞く動画を撮影するつもり。自分では気がつかなかった部分を他の人がどう見ているかがわかるのが面白い」と、イベントならではの動画を撮影した。
TikTokクリエイターと
アートの化学反応を起こす
森美術館がTikTokクリエイターを招いて行う「#empty」は今回で3回目。「#empty」という自由なイベントを企画した意図について、洞田貫晋一朗は「『#empty』はクリエイターが集まる機会、アートを題材にして撮影できる機会を提供したいと考えている。アートとクリエイターの化学反応があれば面白い。うまく撮影できなくてもいいし、投稿しなくてもいい」と話す。
投稿や撮影のルールだけでなく、美術館の楽しみ方も自由。「美術館は来場者に作品を見てもらうという一方通行なところがあるが、我々としては見に来た人にも自由に発信してもらいたい。『#empty』でも、自由に表現できる方がいいと考えた。ルールを設けたり、『これを撮影して』とお願いしたりするとインフルエンサー・マーケティングのようになってしまう」と洞田貫。展示を説明することでクリエイターの目にフィルターをかけたり、気を遣わせたりしないようにも配慮したという。
「クリエイターにもそこで色々感じてもらって、今後に生かしてもらうなどの機会になったらいい。ビジネスに結びつかないことができるのは、美術館しかないと思っている」と洞田貫。美術館としての新しいあり方、可能性を示すイベントとなった。TikTokで#emptyMoriArtMuseumと検索すると、個性的なTikTokクリエイターによるバラエティー豊かな投稿が楽しめる。
期間: 2023年3月26日まで(会期中無休)
時間: 10:00~22:00(最終入館 21:30)。火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)、ただし3月21日は22:00まで(最終入館 21:30)
会場: 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
PHOTOS:SHUHEI SHINE
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