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本明秀文のスニーカーと商売を愛した人生 アトモス退社の理由を激白

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本明秀文/「アトモス」創業者

本明秀文(ほんみょう・ひでふみ):1968年生まれ。米フィラデルフィアの大学を卒業後、商社に2年間勤務。96年、裏原宿にスニーカーの並行輸入店「チャプター」を開き、翌年、テクストトレーディングカンパニーを設立。2000年に正規取扱店として「アトモス」をオープン。21年10月に、世界最大のスニーカーの小売店、米フットロッカーに会社を3億6000万ドル(当時約400億円)で売却。売却後は、フットロッカー アトモス ジャパンの最高経営責任者兼チーフ クリエイティブオフィサーとして、「アトモス」をはじめ、「アトモス ピンク」や「トーキョー23」などを運営。23年1月31日付で、同社を退社した。1月に東京・大塚のおにぎり屋「ぼんこ」と共同経営する「こぼんこ」を設立し、新宿に系列店「ぼんこ」をオープン。初著書「シューライフ 『400億円』のスニーカーショップを作った男」(光文社)が好評発売中

 「悲しくて、悲しくて、涙が溢れるよ。夢の中で僕が靴を売っている。悲しくて、悲しくて、涙が止まらない」。1月31日にアトモスの代表として行った最後のライブ配信で、本明秀文は、彼らしく歌を歌い、涙ぐみながらそう締めくくった。既報の通り、本明氏が26年近く苦楽を共にした、家族のようなスニーカーショップ「アトモス」を退社した。世界最大のスニーカー小売店、米フットロッカーに会社を売却してから、わずか1年あまり。業界のご意見番として、歯に衣着せぬ物言いは、愛され、ときに軋轢を生み、それでもスニーカーカルチャーの発展に尽力してきた。

 本明氏がスニーカー業界に残した功績と衝撃を振り返るとキリがない。本明氏は、96年に脱サラして、スニーカーの並行輸入ショップ「チャプター(CHAPTER)」を裏原宿に開いた。“エアマックス95”に端を発する“エマックス狩り”が社会現象にまでなった時代だ。その“エア マックス95”を世界中から輸入して、日本で一番多く売った。そして、わずか4.5坪だった渋谷の「チャプター」2号店では、アパレルによる月坪売り上げの世界最高記録1730万円強を叩き出し、2000年にオープンした「アトモス」は、「ナイキ」との世界初コラボを成功させた……。

 誰よりも愛してきたスニーカー業界と「アトモス」を去ることに、身内や関係者ですら驚いたことだろう。退社の理由とこれからについて語る。

「スニーカーをどう履こうが、それは買った人の自由」

――退社の理由は?

本明秀文(以下、本明):フットロッカーは売上高1兆円に迫る世界一のスニーカーの小売店だ。では、「アトモス」やテクストトレーディングカンパニーは?というと、売却までの25年間は、僕がやっていた個人商店だった。僕はこれまで、僕の商売のやり方を信じてやってきた。僕には僕の商売のポリシーがあり、当然フットロッカーにはフットロッカーのポリシーがある。フットロッカーに会社を売ったということは、例えるならお客さまにスニーカーを売ったのと同じ。そのスニーカーをお客さまがどう履こうがそれは自由だから、僕が口出しするのはお門違いだと、それに改めて気付いた。

――いつからズレを感じていた?

本明:会社を売ってしばらくしてからだ。今までと様相が違うな、と感じてきた。ただ、会社を売った時点では、そういう認識がなかった。誰かに売ったスニーカーは、街で履こうが、飾ろうが、転売しようが、たとえそれで農作業をしようが、買った人の自由であるということを、僕が分かっていなかった。スニーカーの履き方を僕が指示する立場じゃない――。それなら僕は役に立てないとシンプルに思っただけだ。それで身を引こうと、4カ月ほど前から話し合いを続けてきた。

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