丸の内をはじめ、全国で街づくりに携わってきた安田氏は、街の本質を「消費するだけの場」ではなく、何かを生み出す「エネルギーの場」だと定義する。(この記事はWWDジャパン2023年2月13日号からの抜粋です)
経済合理性に偏った街は面白くない。飲食店は収益性の高い、つまり家賃を払えるチェーン店ばかりになる。長年親しまれてきたような父ちゃん母ちゃん食堂は消えていく。そしてコンセプトやデザイン、クオリティーで差をつけるのではなく「価格を下げる」ことを競うようになる。洋服も食事も「安い方がいい」となったのが、この30年の日本だった。ファストフードやファストファッションが悪いわけではないが、それ一色だと街は魅力を失う。地方ではクルマ中心になってしまい、歴史のある中心街は寂れてしまった。
私は全国の街を復活させたいと本気で考えている。そのために街づくりに携わる人たちに、いつも伝えていることがある。
エネルギーが生まれる場
街は「消費するだけの場」ではない。カフェで飲む一杯のコーヒーからビジネスのアイデアが生まれたり、友人とワインを飲み交わして新たな面を見つけたり、街ゆく人のファッションを見るだけで幸せな気分にさせてもらえたり——。何かが生まれるクリエイティブな「エネルギーの場」でもあるのだ。
建物だって単なる箱ではない。その空間からエネルギーを生み出すための建築であるべきだ。コスメもファッションも建築デザインも内なるエネルギーの発露である。高くてもアルマーニの服に魅せられ、よく故障してもマセラティの車はカッコよく、何が何だか分からなくてもガウディの建築は胸を熱くさせる。経済合理性だけでは計れないエモーショナルなものだ。そしてエネルギーは人が創り出す。その舞台を作るのが街づくりだと思う。
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