日本の縫製工場を支えてきた「技能実習制度」が大きな岐路を迎えている。法務省は昨年12月から、制度の見直しに向けた「有識者会議」を招集し、すでに3回を終えた。「技能実習制度」は、もともと1993年に始まった「外国人研修制度(以下、研修制度)」を、2010年に見直して「技能実習制度」としてスタートしたもの。政府は建前としては「技術移転」などを掲げているものの、実質的には人手不足に悩む日本の中小・零細企業の労働力になってきた一方で、不当労働や人権侵害などの多くの問題を抱えてきた。「メード・イン・ジャパン」を支える光と影とも言える「技能実習制度」の現状と今後を、3人の識者に聞いた。
成田を拠点に置く監理団体のグローバル・ビジネス・アライアンス協同組合(以下、GBA)の松本伸彦代表理事は、実習生の入出国をサポートし、日本語講習などを提供するTSC JAPANの代表取締役も務める。過去にはベトナムで送出機関を運営していた経歴もあり、技能実習生の問題をさまざまな角度から見てきた。
松本伸彦/グローバル・ビジネス・アライアンス協同組合代表理事、TSCJAPAN代表取締役
松本伸彦(まつもと・のぶひこ):1961年生まれ。2006年にベトナムに渡る。10年にTSC JAPANを設立。15年にハノイで送出機関3S人材開発教育訓練を設立するが、20年に撤退。同年グローバル・ビジネス・アライアンス協同組合設立。NPO法人グローバルアイの代表理事も務める PHOTO:YUTA KATO
WWDJAPAN(以下、WWD):GBAではどのくらい実習生を受けいれている?
松本伸彦GBA代表理事(以下、松本):今は80人ほど申請中で、製造業や建設業などの中小企業28社の組合員企業に実習生を送り出している。失礼かもしれないが、僕は組合員企業をお客さんとは思ったことがない。実習生の人権に対して同じ考えを共有する仲間だと思っている。何100社も抱えているようなほかの監理団体とは違い、ビジネスとして組合員企業を増やしていくつもりもない。組合員になりたいという企業の紹介があった場合にも、どんな思想を持った会社なのか、どのように連携できるかをヒアリングすることを大事にしている。それがGBAの考えだ。企業の面談に行く時には日本人の従業員が楽しく働いているかどうかも確認する。問題が起こる企業は、日本人社員にも十分な環境を提供できていないところが多いからだ。
WWD:松本さんが考える技能実習生の課題とは?
松本:マスコミはよく「安い賃金」に焦点を当てるが、実習生本人が受け取る金額にスポットを当てると認識がずれる。制度をきちんと理解している企業なら、通常の雇用保険(社会保険費)に加えて、監理団体への監理費なども含めると1人あたり月に24、5万円を負担する必要があることを認識しているはずだが、「技能実習生=安い」というイメージを、実際に受け入れている企業でも認識しているところもある。これは大きな問題だ。
実習生の高額な手数料には監理団体へのバックマージンも
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