ファッション

「ドルチェ&ガッバーナ」の祝福を受け「トモ コイズミ」が次のステージへ【2023-24年秋冬ミラノコレ取材24時Vol.6】

 2023-24年秋冬ミラノ・コレクションは、最終日にドカン!とインパクトあるショーが待っていました。「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」が「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」の若手クリエイター支援プロジェクトの一環として、2023-24年秋冬コレクションを発表したのです。「東京からミラノへ、ミラノから世界へと届ける花束のようなコレクション」と小泉デザイナーが語る通り、最終日に相応しい華やかなショーに、客席からは「ブラボー」の声と大きな拍手があがりました。

11:30 「トモ コイズミ」

 ステファノ・ガッバーナ(Stefano Gabbana)とドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)が客席から見守る中、登場したのはいつも通り、いや、いつも以上にボリュームがあり、カラフルなドレス群です。ファーストルックには「ドルチェ&ガッバーナ」のアーカイブから着想を得たコルセットトップが登場。それもまた、カラフルな「トモ コイズミ」カラーとなっています。生地は定番のチュールに加え、「ドルチェ&ガッバーナ」から提供されたオートクチュールライン“アルタ モーダ(Alta Moda)”のプリント生地をたっぷりと使用。両者のクリエイションの方向性は違うけれど、カラフルな色使いや楽観的な明るさ、が共通しており、驚くほど相性がよく着地しています。

 後半にモデルが連なって登場したルックには、2021年に大阪でポップアップを開催した際に壁面装飾に使用した生地を使用。「美しい装飾を使い捨てすることがどうしても耐えられなかった」と小泉デザイナー。「カラフルな配色の調和の取れたピースを他人とシェアする、というような意味も込めた。言葉以上の感覚を見た人が感じてもらえたら本望」と話しています。

 ショーの後、バックステージに向かうとそこには興奮と幸福感の渦があり、その中央では小泉智貴デザイナーが海外ジャーナリストから囲み取材を受け、英語で直接、丁寧に回答していました。ドメニコとステファノがハグに訪れると自然と大きな拍手が生まれ、再び感動の波の中へ。若手にチャンスを提供するドメニコとステファノはエラい! そして2人が美しい服とショーを素直に楽しんでいることはその表情からも伝わってきて、見ている方が嬉しくなりました。

 この先、「トモ コイズミ」は、世界中にオプティミスティックを届ける“旅するデザイナー”として様々なブランドやデザイナーとコラボレーションをし、各社のアーカイブ生地を使ってコレクションを発表したら面白いのではないでしょうか。

14:00 「ジョルジオ アルマーニ」

 「アルマーニ / カーザ」の椅子に腰かけるモデルが登場して、「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」のショーがスタート。モデルが「座っている」ランウエイはとても珍しく、アルマーニさんがプライベート空間を大切にしていることがよくわかります。「新聞記事のために服を作るのではなく、着る女性のために作るのだ」という姿勢がクリアです。

 そして今季最も印象的だったのは、その色使いです。グレージュと言われるグレーとベージュの間のニュアンスカラーが「ジョルジオ アルマーニ」の特徴のひとつですが、そのグレージュ以上に今季はピンク味の強い桜やピーチなどが主役になっていてフレッシュです。サテンやシフォンの柔らかい素材感を生かしたドレスやワイドパンツにメンズライクなジャケットをさらりと合わせます。

 アルマーニのショーはいずれもフィナーレの行進がなく、今季は、その代わりに1920年代調のグリッターのドレスを着たモデルが「アルマーニ ビューティ(ARMANI BEAUTY)」のものと思われるコンパクトを手に化粧をしながらゆっくりウォーキング。家具や化粧品などと連動したショーでブランドの総合力を見せたワンシーンとなりました。

18:00「アツシ ナカシマ」

 われわれのミラノ・コレクション取材の大トリは、「アツシ ナカシマ(ATSUSHI NAKASHIMA)」です。3年前には、チーム全員でミラノまで来ていたのに、コロナの感染が拡大し現地でショーが中止になったという悔しい思い出があるそうで、今回は待望のリベンジです。

 中島篤デザイナーはいま、気候危機に最大の関心を寄せており、今季から“循環性“を追求してリブランディングすることを発表しました。素材に選んだのは、廃棄衣類のリサイクルボード「パネコ」を生産するワークスタジオとの協業で生まれた分厚い不織布のような新素材“パネコペーパー“です。廃棄衣料を粉砕して紙漉きの原理で作られたもので、何度でもリサイクルが可能とのこと。

 座席に置かれたパネコボードには、交通系ICカードなどに活用されているNFCチップが埋め込まれていて、スマートフォンをかざすだけでリリースが画面に表示されるようになっていました。NFCチップは今後ブランドからのメッセージを発信するツールとして活用していくそうです。

 コレクション前にアトリエに伺った際に中島デザイナーは、「ファッションという発表できるツールを持っているからこそ、面白いものを作っていろんな人にわかりやすくメッセージを伝えたい」と話していました。インパクトのある“パネコペーパー“やNFCチップのドレスは、ご本人が言うように「わかりやすい」けれど、エレガンスを共通言語とするミラノのファッションの世界でどこまで伝わるかは難しい部分があると思いました。より実験的なクリエイションを受け止める土壌があるパリやNYの方が発表する場所はあっているかもしれません。

 私たちもメディアを通して、どのようにサステナビリティを伝えるべきか試行錯誤を重ねてきた分、その難しさに共感します。今回のピースは販売せず、今後も新たな環境配慮素材を実験的に採用する場としてショーを活用していくそうです。

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