ファッション

「オフ-ホワイト」&「クロエ」は“らしさ”復活、「ジバンシィ」は“いじめられっ子”状態から脱却!【2023-24年秋冬パリコレ取材はどこまでも Vol.3】

 終日パリコレ取材は、本日が3日目。どうやらパパラッチ取材が予想以上に気力&体力を消耗しているようで、従来通りの本調子が未だ掴めておりません(笑)。そろそろフルスロットルで行かなくちゃ!ということで、本日のドタバタ日記は、こちらです。

10:00 「ドリス ヴァン ノッテン」展示会

 朝イチは、ショーに感動した「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」の展示会へ。コレクションについては、コチラをご覧ください。

10:50 「ロジェ ヴィヴィエ」
心からの「キャー」が
今シーズンも止まらない

 「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」は、ユーモアたっぷりのロマンチスト、ゲラルド・フェローニ(Gherardo Felloni)=クリエイティブ・ディレクターが現職に就任して以降、心から「キャー」とか「ワー」とか叫べたり、「クスッ」と笑えちゃったりするアイテムが多いので、ラブです。究極、ファッションの本質ってソレだと思うんですよね。毎日がちょっとだけ嬉しくなったり、自分に自信が持てたりする、そんなアイテムを世に送り出してくれるゲラルドを私は結構愛しています(笑)。

 そんなゲラルドが提案する新作は、コチラ。見てください、このシルクサテンのデッカいリボン(笑)。ラブいわ。愛しかないわ。大好物です。シューズ単体のブランドが総合的なラグジュアリー・ブランドに押されがちな今、突き抜けたクリエイションでマーケットの潮流に抗っているようにも思え、応援したくなっちゃいます。

 抗っていると言えば、バケットハットやロンググローブなど、バッグやコスチュームジュエリーに次ぐ新カテゴリーにも果敢に挑戦しています。こちらもいきなりの総レオパードなど、攻めまくり。クラフツマンショップがあるからこそ、攻めたデザインもラグジュアリーに仕上がる。そんな勝ち筋が見えている気がします。

12:05 「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー」
アローやタイポグラフィは不在も
“らしさ”はだいぶん復活で一安心

 さてお次は、イブラヒム・カマラ(Ibrahim Kamara)がブランドのアート&イメージディレクターを務める「オフ-ホワイトc/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」です。

 英雑誌「デイズド(DAZED)」の編集長も務めカルチャーから社会にまで精通するカマラの「オフ-ホワイト」は前回、真っ青なボディポジティブでグラフィック&タイポグラフィからコンセプチュアルなブランドへの脱皮を示唆。アローのモチーフさえ存在しない変身っぷりは不安でもありましたが、今回は、“らしさ”を取り戻し、その不安を払拭してくれました。

 引き続き、アローのモチーフやタイポグラフィはほとんど存在しません。ボディコンシャスなシースルーレースのドレスを筆頭に、前回多用した循環を意味するサークルのモチーフ使いも登場します。しかしながら宇宙飛行士のような総シルバーのキルティングブルゾンとカーゴ風パンツ、メンズのスカート、ウィメンズの大ぶりなチェスターコート、こうしたアイテムを駆使したレイヤードなど、ストリートムードはカムバック。エレガントなドレスも、一列にビッシリ並べるなどのハトメ使いで視覚効果を高め、キャッチー仕上げています。やはりブランドならではのスタイルコードは必要なので、今回のバランス感覚には大賛成です。

 とは言え、現行のファンにはタイポグラフィーやアローのモチーフ、グラフィティーに代表される、既存の「オフ-ホワイト」らしさが望まれているでしょう。それらがコマーシャルラインでしっかり提案されていることを望みたいと思います。

13:00 「ディオール」ファインジュエリー
プレタ同様、ジュエリーも
売れそうな気配がプンプン

 「ディオール(DIOR)」は一瞬プレタポルテの展示会を覗いた後、ファインジュエリーの展示会へ。今回拝見したのは、ファインジュエリーのカテゴリーではありつつ、華奢なロゴモチーフからジェンダーレスなタイプまで、指輪は頑張れば買えるプライス。こちらも売れそうな気配プンプンです。

14:30 「クロエ」
才女ガブリエラが
歩み寄ってくれた

 お次は「クロエ(CHLOE)」。クリエイティブ・ディレクターのガブリエラ・ハーストは、自身が容姿端麗な才女であり、恵まれた環境で暮らしていたからこそ率先してソーシャルグッドなサステナビリティ活動にも没頭しています。しかしながら一方で、その自信や、やっぱり才女であろう取り巻く人々とのコミュニケーション影響なのか、コレクションはちょっぴり強すぎて、特に可愛らしさも重要な日本のマーケットにはフィットしづらい印象も受けていました。メッセージ性が強いと、共感しづらい人は“置き去り”されたカンジがしてしまう。コミュニティを築くことは本当に大事だけれど、インターナショナルブランドには一方で語りかけたり、歩み寄ったりする姿勢も必要。そんなバランス感覚について考えるきっかけ提供してくれたブランドです。

 ところが今回のコレクションは、そうした強さで押し切ったり、一方的に強く提示されるから他の選択肢を認めてくれないように感じてしまうムードは大幅に改善されました。引き続き縦長のシルエットや、インパクトの強い黒白に黄色のカラーコンビネーションで作るレザーブルゾンは「日本人には難しいな」という印象も否めませんが、今シーズンはオフ白のドレスにはプリーツや曲線のシルエットをしっかり取り入れ、ニットの柔らかさや心地よさ、ダウンの軽さ、ボアの“ほっこり感”を最大限に引き出そうと試みたアウターも好印象です。大きなメタルリングに複数のポーチを繋げるアクセサリーなども含めて、時代をけん引するガブリエラのコミュニティーが別の方向を振り返り、「仲間になろうよ」と誘いかけてくれた雰囲気を感じました。こうやってサステナビリティの輪が世界中に広がっていけばと思います。この分野での先駆者には、引き続き期待です!

16:00 「ジバンシィ」
“いじめられっ子”状態から脱却
2軸に大いなる可能性を見た!

 お次は「ジバンシィ(GIVENCHY)」です。ショー会場の周辺には、ブランドに憧れていたり、セレブを一目見ようと画策したりの若者が大勢います。次回のスナップは、「ジバンシィ」の会場で決定です!

 こちらの記事の通り、マシュー・ウィリアムズ(Matthew Williams)=クリエイティブ・ディレクターが手掛ける「ジバンシィ」は、正直“いじめられっ子”状態で、なんだかかわいそうな気がします。どうしてマシューの「ジバンシィ」がいじめられてしまうのかと言えば、私の推理では、「他のメゾンは完成度が高いのはもちろん、もはや簡単に批判できないほど強大な存在になってしまったから」「マシューがヨーロッパとは違う価値観を持つアメリカ人だから」、そして「とはいえマシューも、これまではコレクションの組み立て方に難ありだったから」ではないか?と思っています。確かにこれまでは、「『ジバンシィ』って、なんだっけ?」と立ち止まってしまうくらい、“マシューのコレクション”だったんですよね。

 マシューがますます「ジバンシィ」と融合するために求められるのは、大別して2つの路線でしょう。まず1つは、「やりたいことを、メゾンの力を借りて、とことんラグジュアリーにやる」ことです。それは前回のメンズ・コレクションで片鱗を見せたもの。ウィメンズでは、中盤のゴリゴリなダメージ加工のパートです。これは素直にカッコよく、マシューにしかできない「ジバンシィ」。この路線は、もっともっと探求して良いと思います(もっとも、あまりに探求すると、マシュー自身のブランド「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM)」近いてしまうので、どこかで整理が必要です)。

 もう1つは、まずはヘルシーなアイテムを掛け合わせることで、まだまだ経験が浅いチュールやシフォン、オーガンジーを使ったドレス作りに慣れていくことです。そして、その点でも今回は合格点だったと思います。後半はオーガンジードレスが続きましたが、それらはいずれもタンクトップのようにシンプルな上半身や、ワンショルダーの肩見せ、バックコンシャスでではあるものの前から見るとシンプルなスリットドレス、スリップドレスなど。メゾンの職人と理解し合いながら制作する第一歩となるアイテムは、十分美しいものでした。

 マシューはこの2軸で自身とブランドの距離を縮め、同時に卓越したメタルパーツ使いでヒットバッグをもう1つ、2つ生み出すことができれば、その先にはかなり明るい展望が待っている気がします。余談ですがマシューはメゾンと無事に契約を更新したし、酷評されていた時に後任とウワサされた「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)のジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)は、正直乱高下が激しいように思います。会場の外の若い世代の熱気を見る限り、「ジバンシィ」はマシューと共に未来を歩むべきです。

17:00 「ピエール アルディ」

 「ピエール アルディ(PIERRE HARDY)」の展示会で新作を拝見。最近ちょっと元気がない印象ですが、キューブモチーフをもう一度上手く使って、「ロジェ ヴィヴィエ」のようにシューズブランドの底意地を見せて欲しいと思います。

 そしてここで、まさかのトラブル!なんと17:30スタートの「リック オウエンス(RICK OWENS)」のショーの開始時間を18:00とすっかり勘違いし、見逃しました(泣)。こんな時に抱くのは、せっかく席を用意してくれたブランドと、情報を楽しみにしている皆さんへの「ごめんなさい」の気持ち。特に「リック」のように熱烈なファンが多いブランドは尚更です。というわけで改めてブランド、そして読者の皆様、「ごめんなさい」。

 気を取り直したワケではありませんが、本日はラストの前に、今度は街の中心部にあるプランタン百貨店(PRINTEMPS)とギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)を見学です。気になったのは、「ジャックムス(JACQUEMUS)」の凄まじき勢い。ことギャラリー・ラファイエットでは、至る所でポップアップを開き、ウィンドーや店舗の入り口をジャックして大騒ぎでした。そして、どのポップアップにも若い世代が並んでいる!一番驚いたのは、ポップアップの花屋(白いチューリップを販売)にも行列が!別に「ジャックムス」特製チューリップでもないハズなのに‼︎この大人気ぶりは、一体何なのでしょう?次のファッション・ウイークまでに、ヨーロッパにいるチームに取材&解明をお願いしたいと思っています。

20:30 「クリスチャン ルブタン」
レッドソールへの
並々ならぬ愛情を見た

 本日最後は、「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」です。裁判までして争っているレッドソールへの想いを改めて訴えてかけるような白いブーツ&真っ赤なソールのプレゼンテーション。新作では、PVCにクリスタルを敷き詰めた官能的なシューズと、フラメンコのように情熱的なフリルバッグ&パンプスに注目です。

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