ファッション

「バレンシアガ」はノー・スニーカー&ノー・フーディで覚悟 「ヴァレンティノ」のブラックタイは今季ベスト?【2023-24年秋冬パリコレ取材はどこまでもVol.6】

 パリコレはいよいよ終盤戦に突入です。少しずつ今シーズンの方向性も見えてきて、受け取る情報量は増すばかり。早速、本日もスタートです。

10:30 「ランバン」
ジャケット&コートに改善の兆し
ドレスもカジュアルダウンで好印象

 本日は「ランバン(LANVIN)」からスタート。ブルーノ・シアレッリ(Bruno Sialelli)=クリエイティブ・ディレクターの「ランバン」は当初、彼が育った「ロエベ(LOEWE)」に通じる実験的要素やストリート感が強すぎた印象がありましたが、少しずつ軌道修正。今は「ランバン」らしいエレガンスを手に入れつつあります。

 そんなブルーノ、そして「ランバン」にとっての課題は、柔らかなシルエットのアウターです。特にジャケットとコートは毎回、直線的で構築的。それはそれでカッコ良いのですが、オーバーサイズやウエストを絞ったアワーグラスなど、もう少しバリエーションが欲しいところでした。構築的なジャケットとエレガントなドレスだけでは、現代の日常生活をカバーしきれないのも気になっていたところです。

 そんな課題に対しては、進化が垣間見えたシーズンでした。ジャケットはまだまだ直線的&構築的なロングストレート主軸ではありますが、ウエストを絞ったり、Vゾーンを少しだけ下げることで柔らかな印象を手に入れた感があります。一方でドレスはニットだったり、装飾を極力排除したり、ブラトップと合わせたりでカジュアルダウン。随分日常生活に寄り添ってきた感があります。

12:00 「バレンシアガ」
騒動を反省して原点回帰?
フーディ全廃で本質に立ち返る

 お次は「バレンシア(BALENCIAGA)」。児童虐待と批判されたキャンペーンビジュアルにまつわる騒動など、今ちょっと逆風に晒されているブランドです。

 だからこそ、という意味合いも強かったのでしょう。今シーズンは、泥まみれの会場という演出でも話題だった前回から一転。白一色のシンプルな空間で、フーディやスニーカーなど、ハイプなアイテムを一切見せない静謐なコレクションを発表しました。主軸はセットアップとドレス。それらを美しいBGMにのせてシンプルに届けます。

 改めて仕立ての良い洋服にフォーカスしたのは、それが、デムナ(Demna)がファッションの世界にハマっていった原体験だからだそうです。彼は6歳の時、親に連れられて近所の仕立て屋さんで洋服を作ったことがあるそう。そこで採寸して、2度仮縫いして、お直しして、そうして完成した洋服に袖を通した経験が今につながっていると回顧します。

 そんな人が少しでも増えることを願ったのでしょう。今シーズンは「バレンシアガ」らしいボックスシルエットやパワーショルダーのセットアップやドレスを連打しました。ジャケットの美しい仕立て、フローラルプリントのドレスの優雅なドレープは、「グレイト・リセット」な今シーズンのムードを象徴しています。

 ボトムスを解体・再構築したようなジャケットなどは新機軸でしょうが、正直目新しさはそれほどではありません。まるでガンダムの世界にいるような、メンズのパワーショルダーのボディスーツにピタピタパンツ、それにブーツのスタイルくらいでしょう。しかしながら「サンローラン(SAINT LAURENT)」や「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VEMETA)などを擁するケリング(KERING)グループは、洋服をきちんと作ることを信条としている印象があります。「バレンシアガ」も同じです。気をてらわず、美しいものをシンプルに見せることの力強さを改めて諭してくれた印象です。

12:40 「エルメス」

 「エルメス」の展示会では、昨日発表したプレタポルテのみならず、日用品の新作も拝見です。

14:30 「アクリス」
100周年記念第二章
ベロアの質感がスゴい

 「アクリス(AKRIS)」は、100周年アニバーサリーイヤーの真っ最中。今回も気合いの入ったコレクションでした。派手さはないものの、端正なシルエットのチェスターコートはチェック柄に緑を加えた、ちょっぴり遊び心の利いたカラーパレット。シフォンのロングドレスには大胆なスリットを入れて、ボア付きのレザーベストを合わせました。普遍的なアイテムのディテールやコーディネートを工夫して、若い世代にも楽しめるスタイルに仕上げています。

 一番のお気に入りは、深いネイビーに染めたベロアです。ロングスカートもクロップド丈のジャケットも、見るからに上質で気品のあるベロアです!あー、なんて素敵なんでしょう。ぜひ店頭で触れてみたい、そんな衝動に駆られました。

15:20 「コム デ ギャルソン」「ジュンヤ ワタナベ」「ノワール ケイ ニノミヤ」

 ギャルソン3ブランドの展示会へ。それぞれのリポートは、コチラをご覧ください。

16:30 「パーム エンジェルス」
パリ旗艦店オープンで
大人の階段を駆け上がる

 「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」は、大人の階段を登り始めました。というのも今春、パリにショップをオープン。高級ブランドがひしめくサントノレ通りに店舗を構えるからこそ、ワンランク上のイメージ発信を強化します。

 代表的だったのは、レザーで作るトラックスーツでしょう。これまでのカラフルな合繊から、モノトーンのレザーバージョンにアップデート。いずれもゴールドのアクセサリー合わせると、大人の色気が漂います。ジャケットやドレスでは、同じく漆黒のベロアを多用。とは言え、ハイパーミニ丈だったり、チェーンディテールだったり、ゴールドボタンでインパクトを増したり、ストリートブランドのキャッチーなアイデアは忘れません。シューズでは、「トッズ(TOD‘S)」とコラボレーション。ドライビングシューズにはチェーンを飾り、スニーカーにはヤシの木を描いています。

 こうしたブランドも独自の方法で、洋服の本質に向き合い、より良い服を作っていこうとしています。

20:30 「ヴァレンティノ」
今シーズンのベストか⁉︎
ブラックタイの可能性を見た

 本日ラストは、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」。出ました!今のところの今シーズンのベストです!

 ブラックタイをテーマにしたコレクションは、文字通りほとんどのルックにブラックタイをコーディネート。ファーストルックは、シャツの襟をホルターネックに見立て、ブラックタイを巨大化させたブラックミニドレスで幕を開けました。カワイイ!

 その後も、クチュールブランドならではのジャケット、オーバーサイズでストリート感も覚えるシャツ、ブラックタイをコートにのせたかのような白黒のマントやコート、市松模様や水玉のショート丈ブルゾン、ハイパーミニのスカートやパンツで構成するスタイルには、ブラックタイ。ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)が考え続ける、ストリートライクなスタイリング提案で普遍的なアイテムを若い世代にも楽しんでもらおうという思いが伺えます。

 ストリートライクに着こなす上で、今季はパンクを強く意識しています。そのムードを掻き立てるのは、2010年に誕生した“ロックスタッズ”のアクセサリーです。今シーズンのアクセサリーは、オール“ロックスタッズ”。ゴールドのピアスもパンクマインドを盛り上げます。

 ブラックタイという王道のスタイルに立ち返り、(「ヴァレンティノ」の場合はこれまで通りではありますが)ちゃんとした洋服作って、本質を追求する。そんな「グレイト・リセット」の価値を教えてくれました。とりあえず私は次のシーズン、裾に「V」のメタルパーツをあしらったブラックタイを購入します!ピエールパオロもお気に入りの商品だそうです(笑)。

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