ファッション

「フェティコ」の官能美や「シュタイン」の静かな情熱、「タカヒロミヤシタザソロイスト.」のモノトーンエレガンス 東コレ全ショーを総力リポート!

 3月13日に2023-24年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が開幕しました。18日までの6日間で、全58ブランドがコレクションを披露します。ここでは、取材チームの記者2人を中心に、全43ブランドのファッションショーをリポート。5日目は「フェティコ(FETICO)」で官能的な美しさを感じ、「シュタイン(STEIN)」の初めてのショーで静かな情熱を垣間見て、「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.)」のエレガンスの余韻に浸りました。

3月17日(金)
11:00「フェティコ」

 「フェティコ(FETICO)」は「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」を受賞し、2度目となるランウエイショーを開催しました。会場中央には大きなミラーボールがあり、円形のランウエイを囲う客席は劇場のようです。今季のテーマは“ユニークビューティ”で、個性的な美しさを放つ、舞台に立つ女性たちに着想。スリットでフリンジを表現したローウエストのドレスやジャケットなど、1920年代のフラッパードレスをほうふつとさせるルックなどが登場しました。ブランドが得意とするボディコンシャスや肌見せのディテールは健在で、女性の官能的な美しさを引き出しています。ディスコに来たようなアップテンポな音楽と、刺激的なコレクションに、朝から心躍りました。(大杉)

13:30「ピーエッチ モード トーキョー バイ エムエフエフ」

 「ピーエッチ モード トーキョー バイ エムエフエフ(PH MODE × TYO BY MFF)」は、フィリピンのマニラ・ファッション・フェスティバル(Manila Fashion Festival)と、繊維商社のスタイレムが協業したブランドです。フィリピン拠点のデザイナーを複数人起用して、現地のエスニック素材やスタイレムの素材を使ったウエアを提案します。東コレ参加は昨シーズンに続く2回目で、今回は8人のデザイナーを起用しました。個人的に気になったのは、エリス・コー(Ellis Co)=デザイナーのメンズウエア。オールブラックのダウンやブルゾンといったストイックなテクニカルウエアを、レースのようなエスニック素材で大胆に切り替えたコレクションがユニークでした。会場ではフィリピン産のコーヒーも振る舞われ、ほっと一息つきました。(美濃島)

14:30「トモ コイズミ」

 「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」は、ファッションコンペ「ファッション プライズ オブ トウキョウ(以下、FPT)」第5回受賞者として、ミラノとパリで披露したコレクションを会場に展示。「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」の支援によりミラノで行ったショーの映像を投影し、小泉智貴デザイナー本人が解説しました。マルチカラーの色使いを意識したボリュームのあるラッフルドレスをはじめ、「ドルチェ&ガッバーナ」から提供を受けたシチリアの伝統的なカレットプリントのテキスタイルや、オートクチュールライン“アルタモーダ”のコサージュを使用したドレスなどを紹介。ニューヨーク・ファッション・ウイークでの発表から3年半ぶりとなる海外でのショーとプレゼンテーションは、ブランドにまた新たな広がりをもたらしたよう。パリでは、小泉デザイナーが憧れるジョン・ガリアーノ(John Galliano)とアフタヌーンティーをして、直々にアドバイスをもらったのだとか。9月にも「FPT」の支援で、パリでショーを行う予定です。小泉デザイナーは「次はエンターテインメント性のあるショーを目指したい」と語っていました。(大杉)

15:30「メグミウラ ワードローブ」

 東コレにはデジタルで長らく参加していた「メグミウラ ワードローブ(MEGMIURA WARDROBE)」が、日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)が昨年新設したサポートプログラム「JFW デジタル グランプリ(JFW DIGITAL GRAND PRIX)」を受賞し、初のリアルショーを開催しました。三浦メグ=デザイナーが手掛ける同ブランドは、ジェンダーレス、エイジレス、ボディーポジティブをコンセプトに、性別や年齢、人種、体形を選ばすに楽しめるアウターウエアを作ります。会場は、渋谷駅西口の地下空間。客入れ時にはキャッチやナンパ師、女子高生、ストリートシンガー、スケーター、ティッシュ配りなど、さまざまなエキストラを配置して、多様性に溢れる渋谷を表現しました。ショーでは、ボンディングでハリを出したボリュームにあるコートを連発。ダッフルをベースにし、フワッと広がるケープ風の設計やクロップド丈、淡いブルーやピンクなどのカラーでアレンジします。素材はウールを中心に、ラメツイードやフェイクレザーなども差し込み、これらに合わせたレースシャツやジョッパーパンツも、コートとのバランスを前提にして制作しました。最後はモデルたちがコートを脱いでフックにかけ、来場者が触れられる演出で幕を閉じました。(美濃島)

16:30 「ネイプ_」

 山下達磨デザイナーによる「ネイプ_(NAPE_)」は、東コレでの初のショーを渋谷にあるライブハウスのサーカスで行いました。今季は“INTERCULTURALISM(多文化主義)”をテーマに、日本のアニメカルチャーに着想を得てオリジナルのアニメを制作。そのストーリーをコレクションにしたそうです。ファーストルックは何とお坊さん!デジタルプリント風の花柄の袈裟を肩から掛けて、お経を唱えます。ダンサーやラッパーなどもモデルとして登場し、パフォーマンスを披露。スニーカーブランド「フラワーマウンテン(FLOWER MOUNTAIN)」との協業ラインでは、鎧のようなディテールが特徴的なジャケットやパンツなどが目を引きました。さらに会場内には奈良の薬師寺から取り寄せたというお香が焚かれており、視覚、聴覚、嗅覚までを刺激します。濃厚な日本のカルチャーが凝縮されたショーでした。(大杉)

17:30「アンスクリア」

 デザイナーの岡ゆみかによる「アンスクリア(INSCRIRE)」は、「東京ファッションアワード」受賞により初のショーを開催。デザイナー自身がスタイリングを組んだ48ルックを披露しました。デニムやニット、スエットなどデイリーなウエアを得意としつつ、袖をカットオフしたジャケットや前身頃と襟だけを残したベストなど、レイヤードアイテムも豊富で、普段着を少しだけモードに味付けしていきます。“いつもより、ちょっとおしゃれ”という絶妙な塩梅が、多くの顧客を引きつけるのでしょう。追って単体リポートを公開予定ですので、そちらもぜひお読みください。(美濃島)

19:00「タカヒロミヤシタザソロイスト.」

 「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.)」は楽天による支援プロジェクト「バイアール(by R)」のサポートの下、東京国立博物館 表慶館でショーを披露しました。ショー前に、宮下貴裕デザイナーにインタビューをする機会があったのですが、「僕を形成した人と協業をしています」と話していて、誰なのか気になっていました。その答えは、アメリカのグラフィックデザイナーであるデヴィッド・カーソン(David Carson)でした。オルタナティブ・ロックを中心にした米カルチャー誌「レイガン(Ray Gun)」のエディトリアルデザインを担当し、型破りなタイポグラフィやレイアウトが、多くのデザイナーやクリエイターに影響を与えてきた人物です。ランウエイには”RAY GUN”のロゴが載ったアイテムが多数登場。ショーは真っ白なメンズのロングスカートルックから始まり、エレガントなモノトーンのルックが続き、痺れるかっこよさでした。続きは、後日アップする単独リポートにて綴ります!(大杉)

21:00 「シュタイン」

 5日目のトリは浅川喜一郎デザイナーが手掛ける「シュタイン(STEIN)」。2022-23年秋冬は映像作品でコレクションを発表しましたが、今回が初のリアルショーでのお披露目です。ランウエイでは得意のロングコートにダウンジャケットやボアベストをレイヤードし、テイストの異なる生地同士の重なりや丈のバランスが新鮮です。ミニマルで静謐な雰囲気はそのままに、一点一点の服はこれまでにない力強さを纏っていて、着実な進化を感じました。コレクションテーマは“further(付け加える)”。一点一点の制作において、まず「やりすぎ」なほどに過剰にデザイン。そこから少しずつリアルクローズの範疇に近づけ、尖ったムードは残していく作業です。例えば今回のコレクションを象徴するピークドラペルのロングコートは、一度は靴につくほど超長丈で作り、そこから2cmほど丈を詰めて仕上げたそう。理想的なバランスを目指す浅川デザイナーの情熱がなせるワザです。23-24年秋冬はパリでバイヤー向け展示会を実施し、海外展開にも本腰。今回のショーでは15台のカメラとドローン撮影を実施するなど、映像を通したクリエイションにも関心が高まっているそう。今後のさらなる探求と進化に注目です。(本橋)

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