舟山瑛美デザイナーが手掛ける「フェティコ(FETICO)」は17日、2023-24年秋冬コレクションのランウエイショーを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で行った。東京都とJFWOが共催するファッションコンペ「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」受賞による支援を受けて、渋谷ヒカリエで発表。平日の朝11時スタートだったが、スタイリストやバイヤー、メディア関係者ら多くがブランドの服を着用して来場し、注目度の高さを証明していた。会場中央にはミラーボールを吊るし、舞台のような演出で妖艶なコレクションを見せた。
着想源は“個性派”の魅力
舟山デザイナーは今季、“Unique Beauty”をテーマに、正統派の美しさではなく“個性派”と呼ばれるような女性たちをインスピレーション源に挙げた。例えば、映画「キャバレー」でキャバレー歌手を演じたライザ・ミネリ(Liza Minnelli)だ。“ロングヘアの女性が美しい”というステレオタイプに対抗してピクシーカットを貫いたことで知られ、魅惑的で独特な雰囲気がある。また俳優ヘレナ・ボナム・カーター(Helena Bonham Carter)も、気品が漂う唯一無二の世界観を持つ。彼女たちのように「自身の魅力を理解し、自分を上手に見せる方法を熟知している人たち」に舟山は心惹かれると言う。
序盤からランジェリー風のカットが特徴的なボディスーツをはじめ、スパンコールを施したミニ丈のニットドレスとブラトップの合わせなど、体のラインを際立たせるアイテムが続く。京都の職人が手描きしたランダムなストライプ柄のドレスや、不ぞろいの編み目のニットドレスなどからは “正統派の美しさとは異なる、ユニークな美しさ”が感じられた。
また1920年代のフラッパーの装いもヒントになった。彼女たちがまとっていたフリンジドレスは、ローウエストのロングジャケットやドレスに施した、スリットやフリルで表現している。
官能的なファッションのアップデート
舟山デザイナーが、服作りにおいて重視しているのが「カッティングによって、女性の体を魅力的に見せること」だ。ブランド名の由来でもあるフェティッシュなスタイルを持ち味に、洋服を通して女性の造形美を讃えているものの、「日本では官能性を押し出したファッションは、難しいポジションにある」と明かす。実際に日本は欧米に比べると、肌を露出する服装がポジティブに受け入れられない場面もある。また女性たちも、周りの視線を気にして、着用することに抵抗感を持つ人も少なくない。
「フェティコ」はセンシュアルな要素を取り入れながらも、国内の産地や職人との取り組みにより、上質で品のある服に仕上がっているのが特徴だ。「(官能的なデザインの洋服が)着用者のマインドも含めて、社会的にも受け入れられる風潮になってほしい」という舟山デザイナーの思いは、日本人を中心にアジア人モデルを採用したキャスティングにも表れていた。
「フェティコ」のユニークなポジション
またその官能性のある服を“売れる服”にする意識も、「フェティコ」のコレクションから感じられる。ショーではスタイリスト山口翔太郎による攻めのスタイリングによって強い印象を放っているが、一点一点は日常着として楽しめるアイテムだ。現在は国内外30を超えるアカウントと取り引きし、ビジネスを拡大する同ブランドにとって“売れる服”の感覚は大事な部分だ。一方で、今季はショーピースとして3体のロングドレスも制作し、ラストルックを飾った福士リナらが着用。肩を大胆に露出し、ドラマチックなインパクトを加えた。
「フェティコ」はこれからも、官能性を美しいファッションに昇華し、独自のスタイルを追求していく。女性たちが自信を持って、肌を見せられる洋服の提案はユニークであり、日本の女性たちにとっても頼もしい存在だ。