「タナカ(TANAKA)」は18日、ブランド初となるランウエイショーを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で発表した。東京都とJFWOが共催するファッションコンペ「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」受賞による支援を受けて、渋谷ヒカリエで披露。「タナカ」はニューヨークを拠点にするデザイナーのタナカサヨリと、クリエイティブディレクターのクボシタアキラのデュオによる、日本製のデニムを強みにするブランドだ。ニューヨークをイメージした演出と、アートやクラフトを掛け合わせた鮮やかなデニムで、東コレ最終日に、力強いショーデビューを飾った。
ブランドの拠点、ニューヨークの街を表現
会場はブランドの拠点であるニューヨークの街をイメージし、碁盤の目になるように客席を配置した。またストリートミュージシャンの音楽が聞こえる街を再現するために、ショー音楽はジャズピアニストの壷阪健登とKANに依頼。メキシコ遠征中のKANの演奏を事前収録し、壷阪がライブパフォーマンスでセッションするで、街の生き生きとした空間を演出した。モデルは人種やジェンダー、年齢も幅広いキャスティングで、ニューヨークの多様性を感じさせる。
デニムをキャンバスに
アートを融合
タナカデザイナーの「デニムをキャンバスとして捉える」というアイデアで、ペイントや染め、箔押し、刺しゅうなど、あらゆる技法によってデニムのアイテムをアレンジしている。ファーストルックは、ジーンズをはいた男性モデルと、デニムジャケットを着た女性モデルの2人組。そのシンプルなデニムは、ショー中にあらゆる加工で姿を変えて、再登場する。
まずは、ニューヨークのストリートアーティストデュオであるFAILE(フェイル)とコラボレーション。デニムジャケットやジーンズに直接ペイントを施したものから、グラフィックのテキスタイルをコラージュしてのせたものまで、インパクトのあるピースが続く。
伝統工芸は、泥染めは奄美大島の金井工芸、藍染は、徳島のBUAISOU(ぶあいそう)との協業によるもの。フランス在住の友人に選んでもらったというビンテージスカーフは、デニムやブラウス、ダウンジャケットなどにドッキング。また古着のスタジアムジャケットなどもデニムと合わせて再構築した。
“生き抜く強さ”と自由の精神
コレクションには、平和への願いを思わせるモチーフも見られた。例えば、花のモチーフをのせたデニムのセットアップは、1960〜70年代に反戦を呼びかけたフラワーチルドレンをほうふつとさせるもの。ハトのペイントも、そのメッセージ性を色濃く感じさせる。
また自由の女神を思わせるルックも登場。女神のトゲトゲの冠のようなヘッドピースや、米映画スタジオのコロンビア・ピクチャーズ(Columbia Pictures)映画のオープニングに登場する女神に似たルックもあった。ショーの後にデザイナーのタナカは「デニムは自由の象徴であり、このショーではブランドのコンセプトに加えて、生き抜く強さのようなものを伝えたかった」という。
ブランドを支える
モノ作りの情景
フィナーレでは会場が暗転し、セルビッジデニムを織り上げる織機の映像をスクリーンに投影した。これはブランドのデニムを生産するカイハラと、加工の西江デニムを訪れたときに収録したもの。ディレクターのクボシタは「ここに出たものは、裏側にいる工場のサポートがあって生まれている。ショーが“かっこよかったね”で終わらずに、モノ作りの情景も感じてほしかった」と説明。会場にデニムの原料である、原綿の俵をディスプレーしたのもその思いからだ。
これらのアートや伝統工芸、古着などを取り入れることで、ブランドコンセプトの“今までの100年とこれからの100年を紡ぐ服”を表現。そして、モノ作りの背景とクリエイティブな表現力、その両方が力強く感じられ、デニムに留まらないブランドの魅力が存分に伝わるショーだった。