イタリアの革製品ブランド「フルラ(FURLA)」は、1927年にボローニャで創業し、ウィメンズのバッグや靴、革小物のメーカーとして100年近い歴史を有する。クラフツマンシップを生かした上質な製品ながら、手の届きやすい価格設定で独自のポジションを築いてきた。2022年にはグローバルビジネスに精通するジョルジオ・プレスカCEOが就任し、「フルラ」は次のステージへ進もうとしている。キーワードはサステナビリティ。その象徴が今春シーナウ・バイナウ形式で発売した新作“ウニカ フルラ アース限定モデル(Unica Furla Earth Limited Edition)”だ。その背景や今後の戦略について同CEOに聞いた。
WWD:あなたはファッションビジネスで豊かな経験がある。その経験を「フルラ」でどう生かすのか?
ジョルジオ・プレスカ=フルラCEO(以下、プレスカCEO):フルラファミリーの一員になれたことを光栄に思う。「フルラ」は、深い伝統と高度なコンテンポラリー表現を持つ、ユニークな地位を築いているブランドだ。私の主な目標は、長年の業界経験を生かして「フルラ」が成功していくための柱を作り、その未知の可能性を最大限に引き出すこと。「フルラ」の価値観に沿って現代の消費者にサービスを提供することは非常に重要であり、多方面を考慮した上で熟練された技術から生まれる複雑な仕事。私たちは、支持してくださる皆さん一人ひとりにとって魅力あるアイテムを提供し続けるブランドでありたいと願っている。
WWD:CEOとして、「フルラ」をブランドとしてどのように成長させていこうと考えているか?
プレスカCEO:まず伝えたいのは、「フルラ」に入社してこのビジネスに飛び込んだとき、97年間のノウハウと経験を持つ本物のイタリアンブランドに出合えた、と感じたことだ。「フルラ」はミニマルなイタリアンデザイン、グラマラスな色使い、現代的なエレガンスをDNAとして体現している。 私の使命は製品、コミュニケーション、ストーリーテリング、そして店舗においてこれらの特徴を表現させることだ。
WWD:そのために就任後、最初に行ったこととその結果は?
プレスカCEO:「フルラ」には長いストーリーがあり、伝えたいイタリアンブランドとしてのストーリーがある。ブランドを正しい方法で伝えることは、結果を出すために必要なこと。そのため2023-24年秋冬前のミラノファッションウイークでは、イリーナ・シェイク(Irina Shayk)を起用した強力なイメージキャンペーンを実施した。このイメージやストーリーテリングは、「フルラ」の本質的な強さを表現することができたと思う。そのおかげで、旗艦店は新旧のお客さまを引きつける新たなチャンスを得ることができた。そして、これはほんの始まりに過ぎない。
WWD:では中・長期戦略における最重要ポイントは?
プレスカCEO:「フルラ」は、ミニマルなイタリアンデザイン、華やかな色使い、現代的なエレガンスをDNAに刻み込んでいる。これらの全ての特徴は極めてユニークなもの。手ごろな価格のラグジュアリーブランドとして今後も存在感を発揮し、優れたパフォーマンスを維持するためには、消費者に焦点を当てること、体験を提供すること、新しいデジタルマーケティング戦略、そして最後には新しい製造アプローチを行うことが大事だ。まず、私たちの歴史に沿ったデザインとコミュニケーションを刷新し、現在そして未来にふさわしいものにすることから始めたいと思う。
WWD:価格戦略と強化するアイテム、その理由を教えてほしい。
プレスカCEO:「フルラ」は全てを持ち合わせたブランドである。このように言えるのは、私たちの製品、コレクションが全ての人々、全ての女性のためのものであることを知っているからだ。「フルラ」は、クリエイティビティと最終的な価格とは無関係であることを示す生きた見本となっている。私たちの理念は、「全ての女性は美しさに値する」だ。「フルラ」は幅広い商品を提供しているため、特定のアイテムに焦点を当てることはない。毎シーズン、コレクションにはアイコニックなバッグ(“メトロポリス” “1927” “ジェネシ”)と新しいスタイルの両方があり、さまざまなお客さまのさまざまな瞬間に届くよう、常にカラフルな色使いで展開している。
循環性を追求した新作発表
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WWD:“ウニカ フルラ アース限定モデル“について、その狙いと苦労した点、顧客からの反応とは?
プレスカCEO:私たちは、ブランドの伝統を保ちつつも現代的、かつオーガニックな方法で基礎を見直すことができるよう、「フルラ」の1990年代のアーカイブから“ウニカ“を選んだ。「フルラ」のオーナーであるジョバンナ・フルラネット(Giovanna Furlanetto)は、長期にわたって持続可能な生産プロセスを試みてきた。
今回の“ウニカ“バッグの特徴は、そのクリエイティブなプロセスと背景にあるアイデアだ。イタリアンメードとして初となる、サイクリカ(CYCLICA)とのコラボレーションにより実現した生分解性レザーを使用したバッグで、トウモロコシ、スピルリナ、ログウッド樹脂、シダなどの天然成分から作られたオーガニック染料を用いている。“ウニカ フルラ アース限定モデル“は、2月23日に全世界で発表され、同時発売された。生分解性ソフトレザーの品質の高さと、その背景にあるストーリー性が評価され、大きな成果を上げている。
WWD:日本は店舗数も多く、「フルラ」の重要なマーケットだ。日本市場に期待すること、それを実現するために実践することとは?
プレスカCEO:「フルラ」は日本との特別な歴史がある。1990年にビジネスを拡大するために、ジョヴァンナ・フルラネットが初めて東京に赴いたのが始まりだ。現在、全世界に438店舗もある「フルラ」の単独店舗のうち、94店舗が日本にある。日本は「フルラ」にとって最強の単一市場であり、メンズウェアの市場としても圧倒的なパフォーマンスを見せている。私たちはコレクションを開発する際、現地のニーズを考慮しているが、その中でも、ディテールへのこだわりやエレガンスへの理解があることで知られる、日本の人々に常に評価されていることを大変うれしく思う。
フルラ・プロジェット・イタリアを開設
WWD:フィレンツェにオープンした新しい複合施設フルラ・プロジェット・イタリアの特徴と役割とは?
プレスカCEO:フルラ・プロジェット・イタリアは、イタリアの製造業の遺産をたたえるとともに、最も美しく手付かずの自然景観との深い結び付きを生み出すことを目的とした野心的なプロジェクトだ。設計を担当したウディネを拠点とするスタジオ、Geze アーキテクチャー(Geza Architettura)は、2022年のアーキテクチャー・マスタープライズ(Architecture Masterprize)や権威あるアーキテクチャーA+アワーズ(Architizer A + Awards)などの国際的な賞を受賞しており、創造性、生産、研究、実験、教育のためのハブとして構想されている。
プロジェット・イタリアの主な目的は、創造性を強化し、さまざまな世代や市場をターゲットにした、より革新的で適切な製品を構想、開発、製造すること。同時に、最も繊細な製造工程を内製化することで、生産能力も強化することができる。
新作コレクションは
暖かな砂漠の風景を表現
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「フルラ」の23年プレ・フォール・コレクションは、暖かな砂漠の風景を着想源に明るいニュートラルカラーからテラコッタトーンまで、柔らかな色彩を組み合わせた。彫刻的でミニマルなフォルムの“ウニカ フルラ”からは、移り変わる夕日をイメージしたかのようなグラデーションカラーが、未来的なデザインの“メトロポリス”コレクションからは、ポップな色合いと立体的で柔らかな素材のミニバッグが登場する。そのほか、モノグラムを施したキャンバスや上質なレザーを使用したコレクションなど、ブランドのDNAを継承しながらあらゆるシーンに寄り添うアイテムをバリエーション豊かにそろえる。