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東レ新社長の大矢氏、「二人三脚で(事業の)体積増やす」 会見の一問一答

 東レは3月27日、東京都内で大矢光雄・副社長(66)の新社長就任会見を行った。6月末の定時株主総会を経て、正式に社長に就任する。大矢氏は1980年の入社以来、繊維の営業一筋だが、ファイバー、テキスタイル、縫製までの全領域を担当しており、「長い東レの歴史の中でも、全般を担当した人は珍しい」という。東レのコア・バリューである研究開発技術を、繊維事業で培ったブランディングやグローバルサプライチェーンの拡充などをミックスした経営手腕を生かす。

 大矢氏は1956年6月11日生まれ、千葉県出身。慶応大学法学部を卒業後に1980年4月に東レ入社。2002年に長繊維事業部長、08年6月にインドネシア・トーレ・シンセティクス副社長、11年6月産業資材・衣料素材事業部門長、12年取締役、14年6月東レインターナショナル社長、16年6月専務取締役繊維事業本部長、20年6月代表取締役副社長執行役員、23年6月社長就任(予定)。

 メディアとの一問一答は以下の通り。

――なぜ今なのか?

日覚昭廣・社長(以下、日覚):東レは高い技術力で革新的な素材を生み出し、事業を拡大してきたし、社会課題の解決にも貢献してきた。ただ、最終製品を作っていないため、一般での認知度だけでなく、市場での価値評価の低さが課題だったと認識している。大矢さんは厳しい事業環境の中で、課長時代から繊維の高付加価値化やサプライチェーン改革などを成し遂げ、グローバル市場でも確たるポジションを築き上げてきた。加えて、繊維事業は拠点もグローバルに広がっているが、外部も含めた人望の厚さもある。これらが決め手になった。

――日覚社長が2010年に社長に就任した際は61歳だった。若返りという意味では物足りないが。

日覚:若返りも重要だと考えているし、現在は50歳以下を対象にした幹部育成にも取り組んでいる。だが、いまの厳しい状況を考えて、知識と経験、実力、人望を考えると、それらを満たす人材を考えると、(結果として)大矢さんという結論になった。

大矢光雄・副社長(以下、大矢):もともと老けて見られるので、10年前もこういう顔だったので、次の10年も変わらないはず(笑)。冗談はともかく、私自身は健康であれば年は関係ないと思っている。

――打診はいつ?

大矢:昨年末に打診があったが、そのタイミングでは一旦保留した。私は繊維の営業一筋で、東レの広範囲にまたがる事業を、どうカバーしていくか考えたかったからだ。だが全社を見渡してみて、ゼロイチではなく、10から100に、100から1000にするような事業も多く、それなら私の経験や力が生かせるのではないかと思い、受けることを決めた。

――趣味と座右の銘は?

大矢:趣味は週一で行っているゴルフ。座右の銘のようなものは特にないが、この10年は吉田松陰の「夢なきものに成功なし」を、折に触れて掲げている。「夢なき者に理想なし、 理想なき者に計画なし、 計画なき者に実行なし、 実行なき者に成功なし。 故に、 夢なき者に成功なし」というものだ。この言葉自体は、日覚(現社長)さんが常に言っていることとかなり近いかもしれない。

――先ほども触れていたが、東レの幅広い事業領域をどうカバーする?

大矢:(会長に就任する)日覚さんと二人三脚で、ときには力も借りるが、自分自身でも事業の中身を精査して判断できるように精進していく。

――この数年は不正問題もあった。どう対処する?

大矢:すでに日覚社長のリーダーシップの下、再発防止と不正防止策に全力で取り組んでいるが、再発防止の取り組みはエンドレス。絶え間なくコンプライアンスの徹底を続行していくが、結局は一人ひとりのモラルの問題だ。最後の一人にまで、再発防止の意識を徹底させたい。

――出身の繊維の今後は?

大矢:繊維事業はプラザ合意以降、構造改革を余儀なくされてきた。だが東レはグローバルなサプライチェーンの拡充、グローバル拠点の高度化、新規市場への取り組みなどを掲げ、事業の拡大を実現してきた。単に面積を増やすのではなく、体積を増やしていく、といった考え方だ。今後もこの考え方で成長を目指したい。

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