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東レが非食用の農業廃棄物から人工タンパク質原料、2030年に最大1万トン生産へ

 東レは、製糖工場などで原料のサトウキビから出るバガスやキャッサパルプ(いずれも絞りカス)を原料に、人工タンパク質などの原料となる「セルロース糖」の新たな製造法を開発した。人工タンパク質素材はスタートアップ企業のスパイバーを筆頭に繊維やプラスチックで商業生産が始まるなど、需要が急増している。東レは水処理事業のコア技術である多彩な「膜技術」を活用。従来の熱を使った精製法と比べてエネルギーの使用量を50%削減できるという。早ければ2030年頃にも数千トン〜1万トン規模の商業プラントを稼働させる。

 タイは世界有数の砂糖輸出国で年間1億トンのサトウキビを生産しており、その際に発生するバガス(絞りカス)は1400万トンに達するという。現在は廃棄か、バイオマス発電などに使用していた。地球温暖化防止対策の高まりに伴い、繊維分野でもポリ乳酸繊維(PLA)やスパイバーの人工タンパク質素材など、石油を原料使わないカーボンニュートラル型のプラスチック原料の需要と生産は急増する一方で、現在は大半をさとうきびやとうもろこしなどの可食性のデンプンを使用していた。バガスを使用したセルロース原料は、食料と競合せず、かつカーボンニュートラルにもなるため、こうしたバイオマス素材企業からの需要は大きい。

 東レは、従来の熱処理ではなく、高価な酵素と、水処理事業などのコア技術である膜分離技術を組み合わせることで、省エネで品質の高いセルロース糖液の精製技術を確立した。酵素生産においても独自の酵素生産培養槽の開発に成功しており、市販酵素よりも安価な酵素調達に繋げられるという。

 技術を確立したことに伴い、2030年ごろをめどに商業生産に乗り出す。商業生産プラントは、数千トンから1万トン規模の設備になる見通しで、ビジネスモデルや原料調達、セルロース糖の販売などについては「パートナーとともに行う」(信正均・東レ常任理事 先端融合研究所所長)と述べるのみにとどまった。今後は自社生産、あるいは合弁パートナーで行うかなどについては未定だ。

 植物由来の糖を使用した工場は、スパイバーもタイで商業プラントを昨年夏から年産数百トンクラスで稼働させているが、こちらは食用のスクロースを原料に使用しているが、並行して非可食の原料を用いた素材生産研究も行っている。

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