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「ライトオン」は「バックル」の何を学ぶべきだったのか【小島健輔リポート】

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ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。今回のテーマは、ジーンズカジュアル専門店最大手のライトオン。かつてこの分野はマックハウス、ジーンズメイトなどと共に存在感を放ってきたが、最近は縮小が続く。しかし米国には、この分野で大きく成長する企業がある。

 日本と米国には「ファッションセンターしまむら(以下、しまむら)」と「コールズ(KOHL'S)」、「洋服の青山」「AOKI」と「テーラード・ブランズ(TAILORED BRANDS)」(2020年8月にチャプター11を申請)など似たようなアパレルチェーンがいくつもあるが、ジーンズカジュアルの「ライトオン」と「バックル(BUCKLE)」は親戚かと思うほど似ている。最近は「しまむら」の業績回復と「コールズ」の経営体制混乱で明暗が逆転しているが、「ライトオン」と「バックル」の明暗は一段と拡大している。日米で似たようなマーケットに位置しながら、この両者の明暗はどうしてこれほど開いてしまったのだろうか。

全米アパレルチェーン利益率No.1の「バックル」

 「バックル」といっても日本のアパレル関係者はほとんど知らないだろうが、全米で最も利益率が高いアパレルチェーンだ。直近、23年1月期は42州に441店舗を展開して13億4519万ドル(130円換算で約1750億円)を売り上げ、内17.1%の2億3040万ドルをFC在庫と店舗在庫を引き当ててオンラインで売っている。

 営業利益は売上対比24.4%の3億2813万ドル(約427億円)、純利益は同18.9%の2億5463万ドル(約331億円)と、利益率は全米アパレルチェーンNo.1だ。コロナ明けのリベンジ消費もあって43.6%増と売り上げが猛烈に伸びた(店舗は1店しか増えていない)22年1月期では営業利益率は25.9%、純利益率も19.7%と過去最高に達しており、絶頂期だった00年1月期のアバクロンビー&フィッチ(ABERCROMBIE & FITCH)の営業利益率23.2%、純利益率14.4%をも凌駕する。絶好調の「ルルレモン(LULULEMON)」でも23年1月期の営業利益率は16.4%(前期は21.3%)、純利益率は10.5%(前期は15.6%)だったから、「バックル」の高収益は突出している。

セレクト過半でも高粗利・高回転の秘訣

 粗利益率は59.4%※(前期は59.8%)もあるから開発型のSPAかと思われるかもしれないが、ブランド商品の仕入れが前期で57%を占めるセレクト型のジーンズカジュアルチェーンだ。機動的な店間移動(店舗間直送)や値引き処分の店舗限定など(全店一斉値引きを行わない)きめ細かい在庫運用によるロスの抑制もともかく、サプライヤーと組んだ1ダースを超えるジョイント型のPB(プレイベートブランド)が貢献している。前期で売り上げの15.9%を占める最も売り上げ規模が大きいPBはAxis Denim社とのジョイントで、他には10%を超える取り組みはない。

 VMDは店内を男女で左右に分けてテイスト別のコーナーを組み、それぞれ仕入れのトップス(売り切り主体)とPBの台帳陳列(補給が前提)で構成しており、サプライの仕掛けと売り方が透けて見える。PBの開発リードタイムは3〜6カ月としているが、60%近い粗利益率の歩留まりと4.80回という在庫回転から見て、PBといっても全ロット一括調達ではなく、しまむら型の分納かワークマン型のVMIに近いサプライマネジメントが機能していると思われる。

 コロナ下の停滞期でも42日、停滞を脱して再加速した22年は30日と短縮した支払サイト(買掛債務回転日数)の速さも柔軟なサプライを可能にしていると推察される。前期から19日も延ばして99.52日と100日に迫る「ライトオン」とはサプライの柔軟性が違うのは当然だろう。

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