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ウィリアム王子とキャサリン妃が挙式した英国寺院で史上初のショー開催
「グッチ」は6月2日、2017年プレ・スプリング・コレクションのショーを英国ウエストミンスター寺院で行った。英国王室の戴冠式が行われる同寺院は、700年の歴史を誇る世界遺産。エリザベス1世をはじめとする王室関係者からシェークスピアやニュートン、ダーウィンといった英国の偉人たちが眠る場所でもある。2011年にウィリアム王子とキャサリン・ミドルトンが結婚式を挙げたのも同寺院の大聖堂だ。
ランウェイは、大聖堂横の回廊に作られた。聖歌隊が歌う「スカボロー・フェア」と電子音が交差するなか、ウィメンズとメンズの96ルックを披露。エリン・オコナーをはじめとする英国出身の往年のトップモデルも石畳のランウェイを歩いた。
同寺院でファッションショーが行われるのは初めてのこと。神聖なこの場所でのショーについてアレッサンドロ・ミケーレ=クリエイティブ・ディレクターは、「クレイジーなこと。教会がファッションショーに対して“イエス”と言えるのはロンドンだけだ」と言う。「クレイジー」は、伝統を重んじながら新しさを受け入れる英国と同寺院へのアレッサンドロ流の賛辞の表現だ。「僕は英国の美学を本当に愛していて、ある種の“カオス”は自分の価値観と通じるものがある」とアレッサンドロ。確かに、ジェンダーレスやファッションシステムの見直しなど、既存の価値観を見直しながら進む今の「グッチ」と、伝統を守りつつ新しさを受け入れる英国文化には共通点が見つかる。
今季の起点は、中世ゴシック建築で知られる同寺院のステンドグラスに描かれたエリザベス1世の姿。ステンドグラスのような繊細でカラフルな装飾が、ふんだんに取り入れられた。また、「初めてロンドンに来た時に見たものを取り入れた」というように、旅行者の目に映る英国の風景を奇をてらわず、素直に取り入れることでポップな世界観を作り上げている。
複数のタータンチェックをはぎ合わせたプリーツスカート、「BLIND FOR LOVE(盲目の愛)」と刺しゅうしたツイードのセットアップ、陶器のカップ&ソーサーに見る青と白のエキゾチックな柄をプリントしたロングドレス、拘束パンツやブリーチアウトしたデニム、スタッズ飾りのパンクルックなど。
「枕の刺しゅうみたいでしょ」とアレッサンドロが言うネコや花の手刺しゅうは“おばあちゃん風”であり、ともすれば古くさく“ダサい”ギリギリのライン。動物モチーフはさらに種類が増え、話題の“ネコ”柄の隣には、英国のジャック・ラッセル・テリアと思われる白と茶のイヌが仲良く並んでいる。
メタリックカラーのコートにフリルを飾ったり、ラメ刺しゅうのスカジャン風ブルゾンに虎柄のワンピースとレースのスパッツを組み合わせたりと、今の「グッチ」のギリギリ感とロマンチシズムを楽しむには、伝統を知りつつ自分のタガを外すことがコツと言えそうだ。