毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2023年月5月8日号からの抜粋です)
五十君:登山をするようになって、山の友人が“ウルトラライトハイキング(UL登山)”界隈のガレージブランドを熱弁する姿に衝撃を受けました。そこにはパリコレやルミネ、ユニクロといったわれわれが普段見ているファッション産業とは全く違う世界が広がっている。カルチャーのタコ壺化で、見えていなかったんだと実感しました。魅力的なブランドやショップも多く、熱量の高さとコミュニティー作りの手法を紹介することで、ビジネスのヒントにしてもらえればと特集を企画しました。
本橋:今回の取材の率直な感想は「あんな風に生きたいね」で一致でしたね(笑)。「ムーンライトギア」を運営するノマディクスの千代田高史社長も「自分が一番楽しんでいて、自分のためにやっている」と、とにかく自分たちが楽しんでいる姿が印象的でした。そのようなデザイナーやショップオーナーの生活を見て「こういう生き方をしたい!」とファンになって、ギアをそろえ、一緒に山へ行く――という感じで、自分がなりたい姿の解像度がすごく高いんですよね。
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五十君:私、もう1つ衝撃だったのが、MYOG(ミョグ)。“Make Your Own Gear”の略で、つまりDIYなんだけど、より濃密に自然と触れ合うために山の装備を軽量化したい、しかし軽い道具がない、ならば作ろうということで始まったULの独自カルチャーです。日本でガレージブランドが多数興った2010年前後は軽い道具が本当にまだ市場に少なかったみたいだけど、とは言え現代はあらゆるモノがお金を出せば買える時代。その中でモノ作りの素人さんが自分で作って自分で売るカルチャーが生まれたのが驚き。しかも機能性が必要な山道具でですよ。1980年代のマンションアパレルや90年代の裏原宿、渋谷109カリスマ販売員ブランドの「欲しいものがないから自分たちで作る!」に似た熱いものを感じました。
本橋:僕は前職の静岡新聞時代に取材した「ブルーパー バックパックス」に再度取材しましたが、オーナーの植田徹さんの仕事ぶりは数年前と変わっていなくて。でも月40個作るザックは、お客さんの価値観の変化や成長に合わせて変わっていく。それが面白いんだそうです。作り手が半年ごとに「新しいもの」を作らなきゃと考えている世界とは違って新鮮でした。
五十君:是非こんな世界もあると知ってもらいたいです!