モノが素晴らしくても、「届ける」にまで思いを馳せないと売れない時代。「マクアケ(MAKUAKE)」で多数の応援購入という形で支持されるプロジェクトは、モノづくりからコミュニケーションに至るまでの設計の何が違うのか?この連載では、モノづくり企業に伴走するキュレーターが成功体験を伝授。時にモノづくり企業が苦手とする、訴求ポイントの整理からターゲットの設定、トップ画像やキャッチコピーに至るまでのコミュニケーション上の工夫を伝授してもらう。今回は、後染め・後加工を専門とする染色加工業者の丸幸産業による「創業54年目の挑戦」のお話。
今回お話をうかがったのは、丸幸産業です。同社は個人経営の織物工場を前身とする、山梨県内でも数少ない後染め・後加工を専門とする染色加工業者。1970年の創業以来、半世紀以上にわたって、衣類や製品の付加価値を高める後染め・後加工サービスを提供してきました。OEMの受注生産をメーンに活動してきた丸幸産業は今年、「創業54年目の挑戦」と題し、ファッションブランド「ラウンド ハッピー(ROUND HAPPY)」を立ち上げました。
「ラウンド ハッピー」には染色加工業者だからこそ出せる美しい色合いと黒色に染め直す技術でリウエアを楽しんでもらい、洋服を長く大切に着用する体験を届けたいという思いを込めています。色を主体とした染色店ならではのブランド作りが魅力で、地元である山梨県富士吉田市の自然を表現するため、「富士山」「芝桜」など全6色を展開。染色の際には地元の富士吉田を流れる「富士山の伏流水」を使用し、伏流水と染料を混ぜ合わせることで透き通った色味を実現しています。
衣類廃棄問題への危惧などから、購入した商品を愛し、長く着用してもらいたいという思いを込め、ブラック サービスという「黒染め直し」も提供。染色店ならではの技術を生かし、商品を2度楽しめるようにしているのも大きな特徴です。
「マクアケ」でプロジェクトを実施したところ、「レベルの高い染色技術とデザインがうまく融合した、すてきなファッションブランドだと思いました」という声が寄せられるなど、サポーターから大きな反響を集めています。今後、丸幸産業は「ラウンド ハッピー」をファッションブランドとして確立していきます。
訴求ポイントの整理
実行者の思い
丸幸産業はOEMの受注生産をメーンにアパレル製品の一部の加工を委託する形で染色加工業を営んできたため、これまで会社の技術や名前が外に出ることはありませんでした。そのため、3代目の堀内茂利社長は入社当時から「自分たちが長い年月をかけて培った染色技術を生かした、形の残る作品を作りたい」という思いを抱えていたのです。そんな3代目の夢を、息子の4代目、洋平・広報担当が受け継ぐかたちで、「ラウンド ハッピー」は立ち上がりました。
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