米国のブランド管理会社、オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)は、日本での事業拡大に本腰を入れる。来日したジェイミー・ソルター(Jamie Salter)会長兼CEOは「(展開するブランドの)日本での総額売上高は現状700億円くらいだが、3〜5年後には5倍にしたい」と話す。年内に日本法人の設立し、国内ライセンシーとの連携を強化していく。
ABGは近年、「フォーエバー21」「ブルックスブラザーズ」「リーボック」「バーニーズ ニューヨーク」「エディー・バウアー」「クイックシルバー」「DCシューズ」といった有力ブランドを傘下に収め、世界的な注目を集める。保有ブランドは40を超え、それらの総額売上高(小売りベース、2022年)は230億ドル(約3兆1510億円)。ソルターCEOは、ラグジュアリーブランドでグループを形成するLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンを念頭しながら、カジュアルブランドによるコングロマリットを目指すという。
相次ぐブランド買収によって日本での存在感も増している。日本でABGのブランドビジネスに関わる提携企業は昨年の2倍に相当する24社に増えた。「日本で成功できれば、他のアジア市場に波及させることできる」と考え、日本法人の設立によってライセンシーとの関係を密にしていく。米国本国で行ってきたアプルーバル(承認作業)やPR連携などを現地化し、意思決定を迅速にする。日本法人は25人ほどの人員になる予定だ。
試金石になるのは「フォーエバー21」の日本事業を運営するアダストリアとの関係強化だ。アダストリアの子会社ゲートウィンは4月にららぽーと門真(大阪)に1号店を出店したばかり。6月2日にはららぽーとTOKYO-BAY(千葉)、秋には横浜や長崎の出店を控える。売り上げ計画に対して「ECは50〜60%と課題を残すが、リアル店舗は150〜160%と良い滑り出し」(杉田篤ゲートウィン社長)。ソルターCEOも「日本で『フォーエバー21』が軌道に乗れば、東南アジアなど他のエリアにも良い影響が及ぶ」と期待する。
ABGはブランドマーケティングに自信を持っている。米国、欧州、アジアなど150カ国、1万以上の店舗網、1400社のパートナーを通じて得られた情報を共有しつつ、地域に最適な事業モデルを構築してきた。ソルターCEOは「グローバルに考え、ローカルに動く」ことがブランドビジネスの要諦だと説く。
現状、保有ブランドのグローバルの総額売上高約3兆円に対して、日本は700億円程度に過ぎない。ひとまず日本の売上高をグローバルの10%にまで高める。日本法人の設立を機に「ドッグイヤーで日本での成長を加速させる」とソルターCEOの鼻息は荒い。