ユニクロ(UNIQLO)と言えば、テニスのロジャー・フェデラー(Roger Federer)選手やスノーボード・スケートボードの平野歩夢選手など、有力スポーツ選手とアンバサダー契約を結んでいることがよく知られているが、実は実業団として1997年から女子陸上競技部も持っている。「鳴かず飛ばず」で一時は廃部も検討されていたという同部の顧問に、2021年に勝田幸宏ファーストリテイリンググループ執行役員ユニクロR&D統括責任者が就任。「やるなら徹底的にやって短期で結果を出す」というユニクロイズムを注入し、現在絶賛強化中だ。掲げるのは「2年間で駅伝日本一、さもなくば廃部」という、ザ・ユニクロイズムな目標。6月1日に開幕する日本選手権を前に、勝田執行役員に実業団を持つ狙いやビジネスとスポーツの親和性について聞いた。
WWD:ジル・サンダー(Jil Sander)氏を始めユニクロの数々のコラボレーションなどを指揮している勝田執行役員が、女子陸上競技部の顧問まで務めていると聞いて驚いた。そもそも実業団を持っていることもあまり知られていない。
勝田幸宏ファーストリテイリンググループ執行役員ユニクロR&D統括責任者(以下、勝田):1997年8月に、陸上部を廃部にするという山口のスーパーマーケットチェーンの丸久から、同じ山口の企業として部を丸ごと引き継いだ。部員は全員転籍し、山口に陸上トラックや寮も作ったと聞いている。97年だから今から26年前のことだが、僕自身もそんなに長い期間、実業団として陸上をやっていたのかと驚いた。
僕の前は、当社の取締役や監査役を務めた前任者が顧問を務めていた。2021年に前顧問が退任することになったが、その時点までの陸上部の成績は、クイーンズ駅伝(11月に行われる全日本実業団対抗女子駅伝大会)の本選に行けたのがたった3回。うち2回は出場22チーム中21位、22位というものだった。前顧問の退任がいい機会だと柳井(正ファーストリテイリング会長兼社長)も廃部を決め、選手の再就職先の検討も進んでいたが、前顧問にとっては選手たちは孫のような存在。「廃部だけは勘弁してくれ」と柳井に何度も掛け合っていたようだ。僕自身は前顧問に入社時から世話になっており、「後任を引き受けてくれ」と頼まれてしまってどうにも断れない。柳井に「涙ぐまれて断れなかった」と正直に話したら、本業が忙しいのにどうするつもりなんだと言いながらも、「やると決めたなら2年で駅伝日本一を取りなさい」と。そういうところは実にユニクロらしいと思う。
WWD:勝田執行役員は伊勢丹ラグビー部の出身でもある。
勝田:(三越伊勢丹の幹部やラグジュアリーブランドのジャパン社トップなど)ファッション業界にはあのころ同じ釜の飯を食っていた仲間が多く、今もその絆は強い。当時の経験があるから、社会人スポーツの表裏はなんとなく分かっている。顧問を引き受けたからにはちゃんとコミットしようと、まずは部員全員と面談し、好きなゴルフも回数を抑えて強化に取り組んでいる。その結果、一昨年、昨年はクイーンズ駅伝の本選で10位に入った。昨年は5位までいくだろうと思っていたのでそこには届かなかったが、2年連続の10位でユニクロが強くなったとは言われるようになっている。今年は一気に日本一を狙う。
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