「私たちの扱うアイテムは非常に幅広く、これまでの検索機能では、ユーザーが各カテゴリーに隠れている“宝物”を見つけるには足りないと感じていた」と米メルカリのジョン・ラガーリング最高経営責任者(CEO)。「ずっとAIの発展を追ってきたが、この数カ月で大規模言語モデル(LLM)が期待値レベルに達してきた。これこそ“宝探し”の手助けになると感じた」と語る。
LLMは、自然言語(普段の話し言葉)を処理し、AIや機械学習モデルの訓練と改良を行う膨大なデータセットを含むモデルで、より洗練されたシステムへとはるかに速く進化させることができる。
グーグル出身で17年にメルカリに入社したラガーリングCEOは、高度な小売りAIの登場に備えるべく、過去2年間、データを整理しながら、テクノロジーが十分に優れたものになるのを待っていたという。そして、オープンAIが3月に「チャットGPT」の開発ツールGPT-4を公開したときに、US版「メルカリ」のデータを迅速に接続し、わずか2週間でボットを作り上げた。
しかし、ラガーリング CEOは「今回はベータ版であり、公式の導入ではない」と強調する。「メルチャットAI」はウェブ上で利用できるが、モバイルアプリでは利用できず、保存や過去のチャットをお気に入りにするなどの機能は提供していない。「『チャットGPT』自体がまだ完璧ではなく、不正確な推奨や予期しない振る舞いをする可能性がある。私たちは物事を提供する前に完璧を求める傾向があるが、GPT-4は十分に魔法のようなものだと感じ、トライすることを決めた」。
米国では同時期にスナップチャット(Snapchat)がメッセージボックスに「チャットGPT」をベースにしたチャットボット「マイAI」をユーザーの承諾なしに追加した結果、1つ星のレビューが殺到した。
US版「メルカリ」は5000万以上のダウンロードと1日あたり35万件以上の新規出品があるという。「メルチャットAI」が本格導入されれば、転バイヤーを含め、さらなるユーザー拡大が見込めそうだ。