企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回は中国出張で知ったシーインのサプライチェーンについて解説する。
3年半ぶりに中国に出張してきました。以前のようにアパレル産地として有名な広州や杭州で企業研修を行うための出張でしたが、広州産地の様子を見たり聞いたりもしてきましたので、今回は、現地で分かったことを紹介します。
まずは、アパレルの製品卸市場を視察しました。私が訪れたのは、広州で3番目に大きいところでしたが、作った製品を5枚から販売してるメーカーが無数に軒を連ねています。自社ブランドとして売っているものもあれば、オーダーに応じて作りますというところもあり、数百枚、数千枚の量産にも対応してくれると言います。
そこで、「(数百枚だったら)どれくらいの期間でできますか?」と尋ねるとみな一様に「5日間」って言うんです。めちゃくちゃ早いですよね。なぜそんなことができるかというと、近隣にある、東京ドーム12個分と言われる広大な市場で素材も付属品も全部そろうからなんです。だからすぐ作り始められるんです。
この広州のサプライチェーンインフラを活用して、急成長したのが、シーイン(SHEIN)なのです。シーインのサプライヤー数社によれば、シーインには4つの取引形態があり、1つ目が委託加工。これは、シーインがデザインも素材も付属品も供給して、サプライヤーは縫って工賃をもらうだけというパターン。2つ目がOEMで、シーインがデザインした商品を、サプライヤーが素材調達して、生産し、製品として納めるものです。3つ目がODMで、デザインもサプライヤーが提案します。4つ目がOBMで、サプライヤーが持っているレーベルのラベルチェンジまたはダブルネームという形です。シーインはこのどれか、または複数の形態でサプライヤーと契約しています。
私は委託加工、OEM、ODMと3つの形態で契約し、月300万枚をシーインに納品しているメーカーと、ODM契約で月5万枚を納品しているメーカーのそれぞれの社長に話を聞いたのですが、まずシーインは地元のメーカーにとっては救世主だったということです。シーインがなかったら、コロナ禍で広州産地の半分のメーカーが潰れていたのではないかと彼らは言っていました。
初回オーダーは大体100枚で、多くて300枚。まずそれを10日間で納品します。それを発売して3日間で追加の判断が下ります。追加分はまた100枚とかなのですが、今度はそれを5日間で納品しなければなりません。ただ、追加分は分割納品も可能で、50枚ずつとかでも受け入れてくれるらしいです。そして、納品した分が支払いの対象になります。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。