軽量な装備を追求する“ウルトラライト(UL)ハイキング”という新しい登山カルチャーが広がり、登山人口の若返りが進んでいる。そんな中で、大手メーカーが作る製品では満足できない個人などの小規模事業者が、文字通り自宅ガレージなどで立ち上げた中小ブランド“ガレージブランド”の存在感が増している。ULハイキングのギアを幅広く取り扱う小売店もあり、そこでしか手に入らない品ぞろえやコミュニティー作りで強いファンを作っている。(この記事は「WWDJAPAN」5月8日号からの抜粋に加筆しています)
東京・幡ヶ谷の「ナイスタイムマウンテンギャラリー(NICETIME MOUNTAIN GALLERY)」は、ザックやウエアといった、いわゆる登山ギア(道具)に縛られないラインアップがユニークなアウトドアセレクトショップだ。店名の通り、山をモチーフにしたアート作品や趣味性の高い小物を、まるでアートギャラリーのようなクリーンな空間に展示販売している。
「僕らの店は、きちんと説明しないと魅力が分かってもらえない商品ばかりなんです。アウトドア用品は、ぱっと見ではなんてことのないものも、細部まですごく手間がかかっている。だからゆったりと見られる店づくりにしています」とオーナー・バイヤーの田中紘一さん。たとえば「サンポスファンライトギア」のアルコールストーブ(一般的なガスストーブより軽量で調理に使用するギア、1万2870円)は、手作業の切削により表面積を大きくしている。これにより温度が高くなるまでの時間を短縮し、お湯が沸くまでの時間と燃料を節約できる。買い付けた当の本人の田中オーナーも「そのためだけに、手作業で膨大な時間と労力を費やすのかと。もはやロマンの世界ですよね」と笑う。
店を立ち上げるまでは、アウトドアショップで働き、ECの運営管理やバイイングに従事していた。その中で「アウトドアギアも、一般のアパレルと同じように半年のサイクルで“賞味期限”が切れ、売りさばかなくてはならない」ことにもどかしさを感じていたと明かす。「時間が経っても価値が落ちないものだけを売りたい」「自分の言葉できちんと説明して、作り手の熱意を伝えたい」。そんな思いで現店長の石井統さんと共鳴し、2015年に店をオープンした。
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