「WWDJAPAN」で“ファッションロー”という言葉が初めて登場したのは2017年だった。当時はファッションローという言葉自体、ファッション業界は当然のこと、弁護士などの専門家にとっても国内ではなじみの薄いもので、「ファッションローとは」を理解してもらうために例を出しながら説明する必要があった。それがこの5~6年でファッションロー関連の話題に対する世間の関心は高まり、「ファッションロー」という言葉自体の認知度も着実に上がってきている。そこで本特集では、ここ数年にわたるファッションロー関連のニュースの“トレンド”を振り返りつつ、法改正から最近話題の生成AIまで、実務の面から今知っておくべきトピックを5つ紹介する。(この特集は「WWDJAPAN」2023年6月19日号からの抜粋です)
経済産業省が3月に発表した「ファッションローガイドブック2023 ~ファッションビジネスの未来を切り拓く新・基礎知識~」では、ファッションローを「ファッション産業やファッション業界に関わるさまざまな法律問題を取り扱う法分野」と定義している。
「WWDJAPAN」でファッションローという言葉が初めて登場した17年ごろは、もっぱら商標権侵害訴訟や、コピー商品・パロディー商品を巡る裁判のニュースが多かった。また、ブルース・ウェーバーやテリー・リチャードソンなど、大物写真家によるモデルに対するセクハラ問題(や疑惑)をきっかけに、業界にはびこるハラスメントに対する意識が高まり、モデルのウェルビーイングが叫ばれるようになったのもこの時期だった。
18年は、「ザ・リラクス(THE RERACS)」が「ザラ(ZARA)」に模倣品訴訟で勝訴したニュースが大きな話題となった。また、この年は人種差別的な言動や商品の販売による炎上事件が多発。「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」が人種差別的な動画キャンペーンを公開したことで炎上し、中国から総スカンをくらった事件は大きく報じられた。また、「プラダ(PRADA)」も販売したキャラクター製品がブラックフェイス表現だとして炎上した。
19年に入ると「文化の盗用」というキーワードが頻出するようになった。「グッチ(GUCCI)」がインドのシーク教徒が巻くターバン風のヘッドスカーフを販売したり、キム・カーダシアンが補正下着ブランドを「キモノ」という名称で商標出願したことで批判を受けた。(結果、「スキムス ソリューションウエア」という名称に変更し、成功を収めている。)
国内では、「グレースコンチネンタル(GRACE CONTINENTAL)」を運営するアイランドが宮崎県のアパレル企業に勝訴し約1億4000万円という高額の賠償金を勝ち取った事案や、「バオ バオ イッセイ ミヤケ(BAO BAO ISSEY MIYAKE)」が類似デザインのバッグを販売する2社を訴えたニュースも話題となった。
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